2025年には34万人の人材不足に陥るとされる日本の介護現場。厚生労働省によると、'25年の介護職員需要が244万6000人であるのに対して供給は211万人にとどまる見込み。約34万人も介護職員が不足してしまう。

 この打開策として目をつけられたのが外国人だ。

辛い介護職を外国人に押しつけている現状

 介護問題に詳しい野党の国会議員が、知られざる現状を説明する。

介護職は、以前は『きつい』『汚い』『危険』の3Kと呼ばれ、今では『暗い』『臭い』も加わって5Kです。加えて低賃金の問題もあります。厚生労働省の統計によれば、介護福祉士の平均年収は378万円で、全職種の平均422万円を大きく下回っています。肉体的に激務であるばかりでなく、他人の命を預かるという精神的な重圧ものしかかる。

わずか2か月後には謝罪文を発表することに
わずか2か月後には謝罪文を発表することに
【写真】問題となったニチイ学館の広告

 これでは介護職につきたがる日本人がいないのも当然といえるでしょう。だからといって日本人がやりたがらないことは外国人にやらせる、と言わんばかりの政府のやり方は承服できませんね」

 さて、冒頭の広告問題に戻ろう。

 ニチイ学館の広報課に広告の真意を聞いてみると、

「人種差別的な意図はございませんでした」

 と釈明し、

「本件に関しましてはさらなる職場環境の整備や生活サポートに努め、人権、文化、宗教、思想等にかかる細かな配慮を徹底することが重要であると考えており、これらの実行をもってフィリピン人スタッフへの対応とさせていただいております」

 と答えた。

 同社に登録しているフィリピン人スタッフには直接謝罪せず、研修制度の充実をはかることで対応するという。

 現在、日本にはEPA(経済連携協定)によるフィリピン、ベトナム、インドネシアの介護士受け入れ制度や留学制度なども含めて3500人超の外国人介護士が滞在している。制度を利用していない外国人なども含めればもっと膨大な数にのぼる。

 今年1月にはミャンマーから初の介護実習生が来日。外国人労働者の業種拡大により介護分野のグローバル化は加速するとみられている。外国人労働者の手を借りたいのであれば、最低限、相手を理解・尊重することが求められる。“言葉の壁”を悪用するようでは話にならない。