話はうんとさかのぼる。登場人物もガラリと変わる。

活動休止は裏切り・無責任か

 1999年10月5日、都内のレコード会社の一室で、人気絶頂だったグループ、SPEEDが会見し、2000年3月31日をもって解散することを発表した。

 その理由は、メンバーのひとりが元ジャニーズJr.と恋愛したことで、グループに軋みが出たなどと取りざたされたが、公の解散理由は「自分の時間が欲しい」などと話していた。

 記者会見後、所属事務所の社長が、記者のぶら下がり取材に応じた(実際は座っての取材だったが)。記者の誰かが「解散ではなく活動休止という選択肢もあったのではないでしょうか」と迫ったときのことだ。社長は、静かに次のようなことを語った。

「解散でなく活動休止にすることは、ファンに対する裏切り、無責任じゃないかと思った」

 解散ではなく活動休止がなぜ“裏切り”になり“無責任”になるのか。今回の嵐のケースを考える中で、過去の記憶がよみがえった。

 絆の強い嵐と、当時のSPEEDとでは内情が違うが、解散することでファンは未練が断ち切れる。一緒に歩んだ時代を思い出にし、次に歩み出すことができる。活動休止となると希望が生じるため、ファンは何かを断ち切る必要はなくなる。復活のその日を待てばいい。

 ただ、復活が一体いつになるのか、嵐本人も関係者も明言しない。2021年から、嵐が活動休止に突入し、さて復活が5年後なのか、10年後なのか。

 SPEED場合、一時しのぎで活動休止にしても、復活の日への足取りがまったく見えないため解散に踏み切った。嵐の場合は、メンバーの絆から、復活の日が必ず訪れるという確証をもっての活動休止を選択したと思える。