記者たちの質問は、会見前に発表されたメンバーのコメントを確認するようなものが多く、掘り下げようとする意志はあまり感じませんでした。

 それどころか、「何年くらい休みますか? 活動再開はいつごろ?」「今だからこそ思い出す楽曲は?」などの核心から外れた質問や、「ジャニーさんには報告されたんですよね?」「事務所の先輩には相談されましたか?」などの忖度がにじみ出るような質問が目立ちました。

 賢明な人なら気づいているでしょうが、会見で質問を許されたのは、ジャニーズ事務所と日ごろ付き合いのあるテレビ番組と大手新聞の記者ばかり。会見がジャニーズ事務所で開かれたことも含め、記者たちに「下手なことは言えない」「出禁になるわけにはいかない」という思いがあったことは間違いありません。

 だから、「ケンカや言い合いになったことは?」「大野さん以外の4人で話はしましたか?」という質問が精いっぱいのレベルだったのです。

 ただ、こうしたジャニーズ事務所とメディアの忖度関係が「人々から望まれているか?」と言えば、そうではないでしょう。

 実際、大野さんの「何事にも縛られず、自由な生活がしてみたい」というコメントを聞いたとき、恋愛や結婚が頭に浮かんだ人は多いはずです。さらに掘り下げると、2015年9月の熱愛報道や悲壮感漂う謝罪会見を思い起こした人もいるでしょう。

恋愛や結婚に触れる質問はなし

 ところが、今回の会見では恋愛・結婚に触れる質問はありませんでした。「全員アラフォーのグループに対して恋愛・結婚に関するフレーズはタブー」という状態は明らかに異常。「個人の意思を尊重する」という風潮の現代においては時代錯誤です。

 また、同じアラフォーで昨年、芸能界引退した滝沢秀明さんと退所した渋谷すばるさんの名前が出ないことも「不自然」と言われても仕方がないでしょう。

 大野さんは2人と「40歳を前に自分の人生を考え直した」という共通点を持ちながら、異なる道を選びました。2人と比較することで、より大野さんの思いを掘り下げるチャンスだったのに、それをしなかったのです。

 大野さんにとっても憶測を書かれてしまうリスクを回避できるだけに、「2人にふれるな」というジャニーズ事務所と「2人にはふれない」というメディアの閉鎖的なスタンスに疑問を抱かざるをえません。