これまでの役者人生、悔しい思いをたくさんした

 舞台では、“欲望まみれ”の王子を演じる中村。そんな中村の内にある“欲望”について聞いてみると、

「欲望の塊(かたまり)でしたね」

 との返答が。これまでの役者人生、売れていく仲間を横目に、悔しい思いをたくさんしてきたという。

「ずっと生意気で野心家だったから、自分に職や需要がないという現実を受け入れられずに“欲”だけが空回りしていって。20代前半は斜に構えていましたが、何かを変えなければと。それで腹をくくって、20代後半は自分の弱いところや現実と向き合っていきました」

 そして30代。キャリアと実力を兼ね備え、ようやく日の目を見ることに。

「いま振り返ると、人として正しい階段を踏めたのかな。たぶん若くして売れてたら、すぐに調子に乗って、その“烙印(らくいん)”を押されていたと思います。何よりも先輩方の背中をたくさん見せてもらったのが大きな経験になりました」

 今はただ一生懸命やるしかないです、と笑顔を見せる。

僕、死ぬときに笑えてればいいやと思っていて。この年齢で話す内容じゃないかもしれませんが(笑)。ずっとそんな死生観を持っているんです。今日も明日も一生懸命やっていれば、悔いはないなと。自分のためにも、これからも頑張っていきたいです」

――今回の舞台では歌うシーンもあるとか!

「(作・演出を手がけ、出演もする)根本宗子さんがずっと僕に歌わせたいと言っていたんです。これまでミュージカルやCMでも歌わせてもらっていて。僕自身も楽しみです。でも役として歌うことになるので、“中村倫也が歌い出した!”とならないように、丁寧にやりたいです」

■舞台『クラッシャー女中』
 ある屋敷の息子・義則(中村倫也)は、静香(趣里)を婚約者として迎え入れる。彼女はゆみこ(麻生久美子)という女中を伴っていた。彼女たちが仕組んだ罠により、次々と露わになっていく“真実”。さらに義則の底知れぬ欲望が、思わぬ事態を招いていき──。
 
3月22日(金)~4月14日(日)本多劇場にて
※その後、名古屋、大阪、島根、広島公演あり
http://mo-plays.com/crusher/