本人がひとりで企画・出演・編集・販促・販売までやっている作品なら別ですが、そうでない作品にもとから罪なんてない。だから本人ではなく、その作品に携わったほかの人のため、その作品が好きな方々のために、映画の上映やCDの発売は予定どおり続けてほしいです。

 ただ、どれを見ても聴いても、「このときやってたんだよなぁ」それがよぎるのは仕方がない。その時点で作品は余計なもので汚されてしまったことになり、これは本当に悔しいことです。

 本人はとことん悔しがればいい! と思いますが、本当に悔しいのは本人ではないのです。先ほども触れましたが、作品はどんなものでもひとりで作っているわけではありません。その1曲に、その1本の映画に、どれだけの人間が関わって、知恵を絞って、時間と労力をかけているか。

 私は、人の時間を使うことは、人の命を使うことだと思っています。他人がわざわざ時間を割いて自分のために何かやってくれたことには、その人の大事な命の一部が使われています。だから、他人から受けた親切には心から感謝しないといけない。そしてまた、自分の時間も大切に使わないといけない。人の時間は、すべてかけがえのない「命のひとかけら」なのですから。

 今回、あっという間に自主回収されてしまった作品、封印されてしまうかもしれない作品に込められた、たくさんの人たちの命の一部はどこへ行ってしまうのでしょう。そして、この後、瀧容疑者のせいで、どれだけの人が命を削って奔走するのでしょう。それを考えたら、芸能人の犯した罪には、法で裁かれるだけでは償えきれない、罪深さがあります。

 でも今、私たち大人がやらないといけないのは、作品を排除することではなく、少しでもこの世界から薬物乱用を減らすために考えることだったり、子どもたちが将来、簡単に違法薬物に手を出さないようにしっかり教えることなのではないでしょうか。映画『レクイエム・フォー・ドリーム』と『闇金ウシジマくん』のおかげで、私にはしっかりと薬物に対しての恐怖心と嫌悪感が植えつけられました。今後も絶対に手を出さない自信があります。

 この2作品は、高校生くらいで1回、全国の市や区が推奨して見せるべきなのではないかと思うほど。みんな「ダメ。ゼッタイ。」どころか「ダメーーッ!ゼッタイ!!!ダメー!!」と震え上がること請け合いです。ただ、効果はすごいですが衝撃もすごいので、多少トラウマになるかもしれません。

 でも、飲酒運転の罪深さや薬物乱用の怖さ、犯罪に手を出さないことを教えるなんてそれくらいトラウマになるようなもので啓蒙するくらいがちょうどいいんじゃないの?戦争や原爆の怖さや嫌さは、小学生のころに講堂で見せられた忘れられない衝撃的な作品で知って学んだことが多いのですから。

 ピエール瀧容疑者も、まずはこの2作品を見て治療に入ってほしいです。


プロフィール

野々村友紀子(ののむら・ゆきこ)                      1974年8月5日生まれ。大阪府出身。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の芸人、2丁拳銃・修士の嫁。 芸人として活動後、放送作家へ転身。現在はバラエティ番組の企画構成に加え、 吉本総合芸能学院(NSC)の講師、アニメやゲームのシナリオ制作など多方面で活躍中。著書に『あの頃の自分にガツンと言いたい』『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』(ともに産業編集センター)『パパになった旦那よ、ママの本音を聞け!』(赤ちゃんとママ社)がある。