原田恵さん(仮名、左)と多田葵さん(同右)は就活にも追われ忙しい日々を送る

 1日当たりの生活費はわずか677円!

 親元を離れて暮らす首都圏の私立大学生が、新たな貧困層になりつつあるという。

「厳しい実態が浮き出たと思います。ただ、ここまで厳しいとは本当に衝撃的でした」

 調査結果を発表した東京私大教連(東京地区私立大学教職員組合連合)の担当者も、ショックを隠さない。

 2018年度に首都圏の私立大学14大学に入学した新入生の家庭を対象にしたアンケート調査結果は、入学後に出費が落ち着く6月以降の毎月の仕送り平均額は8万3100円で調査開始以来、過去最低になったことが明らかに。そこから家賃を除いた生活費は2万300円で、1日当たり自由になるお金は677円。ピークだった1990年度が2460円だから差は歴然としている。

 食費や光熱費をそこから捻出できるのか……。

スマホのやりとりで満足

 城西国際大学大学院准教授で生活経済アドバイザーの柏木理佳さんは、

「学生が確実に借りる場所にあるワンルームのアパートの家賃は、比較的高めに設定されています。建物も耐震用に変わってきていますので、昔のような古いアパートなどはどんどん減っています」

 と家賃の高さを指摘する。

 調査によれば、平均家賃は6万2800円。仕送りに対する家賃の割合は7割を超えている。“ひとり暮らしの家賃は月収の3分の1”という目安の逆で、生存はできるのか。

 前出・柏木准教授は、学生の置かれた窮状を、

「スマホは生活必需品となっているので削ることはできない。テキストや専門書なども購入しなくてはならない。学食は高い。交通費もかかる。お金に余裕がなければサークル活動も難しい。飲み会も減っている印象がありますね」

 と伝えるが、悲壮感は感じないという。

「みんなでお金をかけて集まって何かをしようという機会が減ってきていると思います。少人数でちょこっとしゃべったりしますが、あとはスマホがありますから、そのやりとりで満足しているようです」

 都内の有名私大に通う女子大生4人に実態を聞いてみた。

 愛知県出身の木下遥さん(仮名、大学4年)は、最寄り駅まで徒歩10分、家賃6万5000円の部屋で暮らしている。

「東京だと、この家賃でもかなり安いほうだと思います。それにプラス3万円を生活費として仕送りしてもらっています」

 仕送り総額は平均をはるかに上回る9万5000円。東京に慣れてから木下さんはアルバイトを始めることになるが、それまでの暮らし向きは厳しかったと振り返る。