そして、いじめと整形の関連性を、猛烈な勢いで否定する。

「だって、ブスだったからブスって言われるの、当たり前じゃないですか! 自分は自分の顔がブスだったと思うから、反論しようとは思わない。だから、いじめは私の整形とは、まったく関係ないですね!」

 客観的に自分を見つめる冷静さと、額の形を整えるために全身麻酔で6時間の一大手術を受ける無謀さ。自家中毒になる繊細さと、暴言の主すらも許せる心の強さ。

 そんな相反するものを抱えたこの女性が初めて“カスタム”の世界に突入するのは、高校時代のことだった。

いじめがなくなってもしんどかった

「目立つというか、イケイケグループの1人になったんです。カラコン入れて髪を染めて、スカートはメチャクチャチョンチョン。誰よりも短くして登校していました(笑)」

母、弟と自宅にて。メイク道具やファッションを買い集め、おしゃれに夢中になり始めた高校生のころ

 クラスの男子たちは、ヴァニラさんたち目立つ女子の一団を、“パタパタ族”と呼んだという。校則が厳しく、髪を染めるのもメイクも禁止。それなのにお弁当を食べ終えれば即、パタパタとメイク直しを始めたからだ。

 ようやっと訪れた楽しい高校生活、親しい仲間─。

 ダンス部で出会い、ヴァニラさんが帰省の際には近況報告をし合うという友人の長原亜希子さんが、このころの彼女をこんなふうに言う。

「その当時から個性的で“お人形になりたい”と言っていましたね。不思議ちゃんというか、ぶっ飛んでるキャラでした(笑)」

 ところがヴァニラさんは、

「自分的にはすごくしんどかったんです。いじめはなかったけれど“いつも自分を作っている”って感じで、無理して周りに合わせていて。それまでいじめられていたのに急に派手になって、ギャップがすごかったからかな。でも、またいじめられるのが嫌で、仲間についていかなくちゃって、無理をして合わせていた」

 パタパタ族がもっとも力を入れていたのがアイメイク。アイシャドーで目を極力大きく見せ、つけまつげで上下を黒々と彩る。そんな理想の目のためには、くっきり二重が欠かせない。ヴァニラさんは二重のりを使っていたが、アトピーが出てしまった。

「皮膚科に通うと、“二重のり自体もかぶれるから、まぶたがただれてよけい二重じゃなくなるよ”と言われて」

 それをきっかけに、目を二重にする“カスタム”を決意した。仲間とバンドを組んでいて、将来はプロとして音楽をやりたい、華やかな芸能界で活躍したいという思いも後押ししたという。

「高校を卒業したら整形しよう、そう決めました。整形費用は、ケンタッキーやテレアポの仕事で働いて7万円を貯めて。手術をしたのは大阪の共立美容外科だったかな。ちょっとだけ緊張したけど、自分よりちっちゃい子とかも来ていたから」

 手術が終わるのももどかしく鏡を見ると、傷痕はまだ生々しかったものの、そこにはくっきりとした二重の線を持った自分がいた。二重のりとは明らかに違う、自然できれいな曲線。予想以上の仕上がりに、思わず涙がこぼれたという。

「ずーっと鏡を見ていました。そんなこと、それまで1度もなかったから」