子どもが本当に身につけるべき学力

『ふつう』というのは、その場の、その時代を占めているその他大勢の人が出す、「空気」なわけです。正しいか正しくないかではなくて、数が多いから「空気」をつくっているというだけ。

 でも70年前には、その空気にのまれて、多くの若者が戦争に行ってしまったという時代が日本にはありました。

 そうした過去を否定するとかではなく、今の現実を新しくつくるために、大人は問い直ししないといけない。そのときに、もっとも不要なものが『ふつう』という言葉だと私は思います。

 やっぱり人は、弱いし流される。「みんながいえばそれが当たり前」という空気になる。それでもひとりひとりが、自分はどう考えるかと自問自答しながら、立ち止まって自分の考えを持てば、その空気はもっと自由なものに変えられる。

 私が見てきた大空小学校の子どもたちは、先生や大人が何を言っても、「だって自分の考えはこうやんな」という高い自尊感情をみんなが持っていました。自分の言葉を大切にしていました。子どもたちは校長の私にも「先生バカやな、わかってへんな」と、ふつうに言います。それが『ふつう』なんです。

 自分の考えを持つ。それが当たり前のこととして、子どもの中に蓄積されていかないとあかんでしょ。これが義務教育で身につけるべき最低限の学力です。そして、その学力は、社会に出たときに“生きるための力”となる。その学力を身につける権利を、子どもは当たり前に持っています。

 それこそが、学校でいちばん大切にしないといけない『ふつう』のこと。それを伝えたくて、今日も明日も私は、全国を飛び回っているのかもしれません。

『「ふつうの子」なんて、どこにもいない』(家の光協会)著=木村泰子
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PROFILE
木村泰子●きむら・やすこ●武庫川学院女子短期大学(現武庫川女子大学短期大学部)卒業。大阪市立大空小学校初代校長として、「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに情熱を注ぐ。その取り組みを描いたドキュメンタリー映画『みんなの学校』は大きな話題を呼び、劇場公開後も全国各地で自主上映会が開催されている。2015年に45年の教職歴をもって退職。現在は、講演会、セミナー等に引っ張りだこで、精力的に日本じゅうを飛び回っている。