匙(さじ)を投げたくなりましたが、「恋愛をした経験がない」と言うのだから、私が手とり足とり、水飲み場まで連れて行くことも仲人の仕事だと思い直し、根気よくサイトを一緒に見ていきました。すると、佳子さんの条件にかなうのではないかという男性がいました。

「この方は、どうかしら? 大卒で都内在住で年収も600万円あるわよ」

 私が言うと、佳子さんはプロフィールをまじまじと見て、家族の欄を指さしながら言いました。

「でも、この方、お父さまが高卒です」

 親の学歴にまでこだわっていたら、もう選ぶお相手はいなくなります。頭でっかちになって条件にダメ出しばかりするのではなく、直感を大事にする。そして、行動してみることが大事!

 石橋を叩いても渡らない。一歩も前に出なければ、新しい未来を切り開くことはできませんよね。

着地点が必ずマイナスになる
負のスパイラル人生

 尚美さん(35歳、仮名)は、吉行さん(36歳、仮名)と真剣交際に入って、1か月がたちました。そんなときに、「ちょっとご相談したいことがあります」と面談の申し入れがありました。

 事務所にやってきた尚美さんは、深刻な顔で言いました。

「吉行さん、もしかしたら貯金がないかもしれません」

「どうしてそんなふうに思うの?」

「すごくこだわりが強くて、服はファストファッションのお店では買わない。ワインの趣味もあるみたいです」

 人にはそれぞれに趣味がありますし、稼いだお給料の中から趣味に費やす金額を決めて捻出(ねんしゅつ)しているのなら、何の問題もない。また、真剣交際に入っているのですから、お互いに貯金がいくらあるのか、1か月にどのくらいの金額で生活をしているのかなど、具体的なお金の話をするのも大切なことです。

 そんな話を尚美さんにすると、「お金のことは聞きにくい」と言います。そこで、私が吉行さんのお仲人さんに、貯金の有無をさりげなく聞きました。お仲人さんからは、「貯金はあるそうです」という答えが返ってきました。

 それを告げると、尚美さんは言いました。

「貯金はあるって、いったいいくらあるのでしょうか?」

 さらに数日後、また尚美さんから連絡が入りました。

「今は別居していますが、横浜に70歳になるお母さんがひとり暮らしをされているようです。お父さんは他界しているし、吉行さんはひとりっ子。将来的に同居になるかもしれません。私が介護をすることになるのでしょうか? もしそうなったら、自信がありません」

 そこで私は、尚美さんに言いました。

「同居するかしないか。介護するかしないか。まだ起こっていない未来のことを心配しても、何の意味もありませんよ。それは、そうなったときに考えればいいことではない?」

 人間、生きていれば毎日いろんなことが起こります。その起こった出来事を、プラスにとらえるか、マイナスにとらえるかで、未来は変わっていくのです。