――実際に音楽業界で働かれてみて、その印象はいかがでしたか?

「ちょうどiPodが流行(はや)りはじめ、違法ダウンロードも活発になってきたりと、デジタルなものが一般的になってきた時期だったんですね。とにかくタイアップをとってCDを売るという形態からの移行期だったので、チャンスさえあれば新しいことをやって業界を席巻(せっけん)することも可能なんじゃないかなと、その機会を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていました。

 もちろん失敗も多かったですけど、学校の先生に褒められたことは1回もなかったのに、音楽業界に入ってからは自分の企画書や提案に対して褒めてもらえたんですよ。こんなに居心地いい場所があるのかと思いました」

アイドルは「消費されやすい」

――渡辺さんの中で、 “アイドル”とはどのような存在だと思われますか?

「一般的にアイドルって寿命が短いじゃないですか。例えば18~25歳までやると、まだ全然若いのに“賞味期限”が切れたと思われてしまうような、非常に消費されやすい存在ですよね。

 だけど結局、彼女たちがアイドルでいられるのは、事務所があって、サウンドを作る人がいて、CDを出してくれるレコード会社があるからこそなので、そうした状況に文句を言いづらいという面がありますよね。その意味では、搾取しようと思えばいくらでもできる存在ではあると思います」

――そうしたなかでも、WACK所属のアイドルたちは、「渡辺さんは私たちをアイドルという商品として扱うのではなく、人間として対峙(たいじ)してくれる」とおっしゃっています。実際Twitterでもアイドルの子たちのつぶやきに対してコメントをされたりしていますよね。

「会話は大事にしています。ただ、いま所属の子が30人以上いて、どうしても会話できない部分も多くなってきたので、先日も所属アイドルを含めたみんなで熱海に社員旅行に行くなど、コミュニケーションの機会は積極的に作っています」