わずか3年で離婚し、父親を失った長女の心労

 ここまで千穂さんの悪夢と再起をご紹介してきました。

 千穂さんいわく、娘さんは当初、千穂さんの結婚に反対していたそうですが、それもそのはず。7歳まで父親不在で育った娘さんにとって夫は途中で登場した父親なので、打ち解けるのは簡単ではないでしょう。結婚前、千穂さんと夫の家は別の学区でした。そのため、千穂さんが結婚すれば娘さんは転校しなければなりません。それでも夫が「自分の子ども」として育てていくこと、娘さんが恩田姓を名乗るために養子縁組することを約束したので、娘さんがようやく心を許し、結婚に承諾し、婚姻届および養子縁組届を提出することができた。つまり、娘さんの犠牲によって実現しました。

 それなのに、わずか3年で離婚し、離縁し、娘さんは父親を失ったのです。このような仕打ちを受けるのなら結婚に反対し続ければよかったし、通い慣れた学校、信頼できる先生、そして仲よしの友達を失うこともなかったと後悔し、「裏切られた」と娘さんは夫のことを恨んでいるに違いありません。

 夫婦の一方、もしくは両方が再婚のケースをステップファミリーといいますが、結婚全体に占める割合は40年で2倍以上に増えています(昭和50年は12.7%、平成27年は26.8%、厚生労働省の人口動態統計)。娘さんは実父だけでなく養父にも捨てられた格好ですが、同様のトラブルはステップファミリーの増加に比例して起こるでしょうから、決して他人事ではないのです。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/