サンマだけじゃない、“旬”の味わい

 ああ、なるほど。食べるとわかる、〈スゴイ〉魚料理ということが。もしかしてシェフ、魚のポテンシャルを引き出す天才ですか。

「たぶん、みなさんは知っているようで魚自体の味をあまり知らないんだと思うんです。本当の魚の味がどんなのかを知るだけで、難しいことをしなくても、おいしく食べられる、はずなんですよ。

 魚の味を知らずに、あれを加えてこっちも入れてと、こねくりまわすから、料理がおかしなことになる。食べてもあんまりおいしくな~い!ってなって、作ったほうも魚料理ってめんどくさ~い!ってなるんじゃないかなあ

赤い競り帽をかぶり、小田原漁港を自由に歩き回る依田シェフ(右から2人目)。盟友でもあるヒラメ漁師の伊代田工さん(手前)と 撮影/寺澤太郎
すべての写真を見る

 とはいえ魚は、肉と比べて下ごしらえに手間がかかる。値段も高い。そこも、魚を避ける一因なのでは?

「ただね、魚にも旬があるんですよ。旬の魚は大量に獲れるから安い。だから〈旬〉なんです。でも多くの日本人は、秋ならサンマサンマって、昨年の冷凍ものでもいいからサンマを食べたいと欲しがる。で、サンマの価格が高騰する」

 ……たしかに。秋はサンマの旬だから〈サンマを食べなきゃモード〉にスイッチが入る。とはいえ、ここ数年サンマは不漁がちで〈旬=大量に出回ること〉とはまるで反対。

「サンマから目を離すと、秋はカマスも旬で大量に獲れているわけです。漁師さんは大漁のカマスをたくさん売りたいのに、サンマに負けて売れない。結果、大漁貧乏な状況になっている。ぼくは秋にはカマスが安くておいしいですよ、って知らせていきたい。サンマに限らず、どの魚にも旬があるのを知ってほしいのです」