《ケース2》離婚は勇み足だったかも

 どうしても「我慢」できないと当時は思ったものの、もしかしたら離婚は勇み足だったかもしれないと後悔しているのは、ユウカさん(47歳)。大学時代の同級生と結婚して16年、中学生と小学生の1男1女がいる。友人たちの間でも評判の「仲よし夫婦」だったのに、1年前に離婚した。

「夫が息子の家庭教師である大学院生の子と関係をもっていたんです。しかもその子は、私の従姉妹(いとこ)の娘。夫は“ほんの出来心だった”と言ったけど、ラブホでいちゃいちゃしている写真を携帯に残しているのを見て、人として許せなかった」

 怒りが彼女を支配した。

 夫の出張中に、歩いて15分くらいのアパートを借り、夫の荷物をそこへ運び込んだ。夫には携帯のメッセージでそれを伝え、会社あてに鍵を送った。

「あのときは夫の顔を見るだけで吐き気がするほど、身体に症状が出てしまって……。どう考えても一緒にやっていけるとは思えなかった」

 共働きをしながらともに「いい家庭」を築いている自覚があっただけに、ユウカさんのショックはあまりに深かったのだ。まずは別居して自分の気持ちを見つめ直したかった。

「ところが、別居して1か月後の週末、駅の向こう側にある夫のアパート近くに行ってみたら、なんと例の家庭教師だった彼女と夫が寄り添って歩いていたんですよ。スーパーの袋を持って」

 別居をいいことに、ふたりはおおっぴらに会っている。そう思った彼女は、ふたりの目の前に飛び出し、夫の顔をグーで殴り、大学院生の彼女にも、平手打ちを食らわせた。

「そのまま2度と夫に会うこともなく、離婚届を送りつけました。夫はサインした離婚届を送り返してきましたが、“あのときは彼女に無理やり言い寄られていただけ”と言い訳の手紙をつけてきたんです。でも、私に選択の余地はなかった」

 あまりの腹立たしさに、とにかく離婚届を提出したユウカさんだが、あれから1年たち、今は少し後悔しているという。

「ふたりがしたことは許せないし、子どもたちに離婚理由も言えないままですが、もうちょっと夫と話し合ってもよかったのかもしれないと……。夫とは毎晩、晩酌しながらいろいろ話す関係でした。自分の気持ちを受け止めてくれる人がいなくなったのがつらい」

 離婚して改めて、自分がどれほど夫を愛していたかわかったのだという。ただ、一方で夫の不倫のショックからまだ立ち直ってもいない。いずれにしても、もう少し時間をかけて考えればよかったと、今の彼女は感じている。