《ケース3》モヤモヤしつつも現状維持

 結婚して10年、9歳になる双子の男の子がいるケイコさん(39歳)。夫は8歳年上で、もとは彼女の職場の先輩だった。結婚して彼女は退職、子どもの入学を機にパートに出るようになった。

 1年半ほど前のこと。夫は異動で部署がかわり、残業や出張が増えていたのだが、無断外泊までするようになりケイコさんは訝(いぶか)しんだ。

 とはいえ、疲れた顔で帰宅する夫を問いつめることもできない。

「もともと職場の先輩後輩という関係だったせいか、どうしても私は夫に従ってしまうところがありまして。自分では我慢しているつもりはないけど、言いたいことを率直に言える関係ではなかったのかもしれません」

 問いつめられないぶん、嫉妬や妄想が広がっていく。半年ほどたったころ、近くに住む夫の父親が倒れたと知らせが入る。夫には連絡がつかない。結局、夫が病院にやってきたのは明け方になってから。走ってきた夫からは家で使っていない石けんの匂いがした。

「これで浮気を確信しました。夫は仕事で徹夜明けにサウナに行ったと言ったけど、どう考えてもおかしい。徹夜で仕事をしていたなら携帯に出られるはずですから」

 義父は回復したものの、さすがに夫も反省するところがあったのか、それからは多少帰宅が早まり、無断外泊はなくなった。不倫を続けているかどうかはわからない。

「問いつめたい気持ちはあります。でも、真実を知るのも怖い。夫は一本気なところがあるので、付き合っている女性がいるとしたら遊びではないと思うんですよね。今はまだ子どもが小さいし、大ゲンカして険悪になるのもイヤだし離婚はもっと困る。経済的にやっていけませんから。私が我慢できるうちは現状維持でいくしかないのかなと思っています。

 夫への信頼は薄れているし、信頼できない相手と結婚生活を続けていっていいのかと自問することもありますが、そこは考えないようにするしかないんです」

 ケイコさんの目が潤んだ。自分の気持ちを見ないようにするしかない彼女の苦悩がありありと伝わってきた。

(アンケート取材・文/松岡理恵 寄稿/亀山早苗)


亀山早苗 ◎フリーライター。東京生まれ。明治大学文学部卒業。恋愛、結婚、不倫、性などを通して男女問題を追い続けている。主な著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『婚外恋愛』『人生の秋に恋に堕ちたら』など