勝ちさえすれば嫌われてもいい

貴闘力 下っ端は大変だけど、関取になって勝てば給料が月100万円になるから、部屋を出てアパートを借りられる。生活を変えるには、強くなるしかないんです。

原田 逆に、負け続けると番付が落ちてしまう。本当に実力の世界ですよね。

貴闘力 本当にまれだけど、大関が序二段まで落ちることもあります。厳しい師匠だと序二段に落ちた瞬間に個室を追い出されて、大部屋の便所掃除からスタート。ただ、悔しさのぶんだけ、番付が上がったときは本当にうれしい。俺も親方をやらせてもらっていたときは「叱咤激励」という気持ちで、若い衆には厳しく接してましたよ。

原田 親方という立場も難儀ですよね。甘えさせるわけにもいかないし……。

貴闘力 まあ、本人に実力があるのはわかっているから、信じられました。そこで悔しがれるやつは、のし上がりますよ。

原田 親方時代のお話も出ましたが、現役を引退する際の“潔さ”も印象的でした。

貴闘力 横綱以外は、自分で引き際を決められるのが相撲のいいところだと思います。野球やサッカーのように、戦力外通告されることもないし、監督に嫌われてレギュラーをはずされることもない。相撲は土俵の上で勝ちさえすれば、嫌われようが好かれようが上に上がれる。俺はそういう戦いが好きだから“相撲は天職”だと思ってました。

原田 普通の人なら、プレッシャーに押しつぶされてしまいそう。力だけでなく精神的な強さもないと、生き残れないですよね。

貴闘力 でもやっぱり、人間だから、いろいろやらかすじゃないですか。食欲、睡眠欲、性欲とあるなかで、俺はギャンブル欲が強くて大変なことになったしね。

原田 たしかに、僕も欲に負けてしまいました……。貴闘力さんがギャンブルに入れ込んだ理由のひとつは、力士としてのストレスも関係していたんですかね?

全裸俳優・原田龍二の「人生、反省。」
【写真】2020年、無観客となった大相撲春場所

貴闘力 原田さんも実感したと思うけど、“欲”って怖いよね。ストレスもあったかもしれないけど、ギャンブル依存症という病気になってしまったんですよ。病気でもなければ、5億や10億なんて金額にはならない。毎日のように高利貸しに追い込みをかけられていたころは必死に逃げ回って、ほかでお金を借りて返さなきゃならないような状況。地獄の苦しみでした。

原田 若い衆時代とはまったく違う苦しみですね……。僕はギャンブルはやらないんですけど、この仕事そのものがギャンブルだと思ってるんですよ。

貴闘力 そうだよね。ただでさえ俳優で食べていけるのはひと握りなのに、仕事がなくなったら、収入もなくなる。今の仕事は何歳からやってるんですか?

原田 22歳でデビューしたので、だいたい30年近く、この世界にいますね。今まで、仕事がまったくないという時期もなく過ごしているので、本当に感謝してます。

貴闘力 30年は長いね。俺は相撲から離れてしまったけどどんな仕事もコツコツ続けるのは大変ですよ。今は焼き肉店を経営してるんだけど、まじめに働いているからコロナ禍で営業時間が減ってもある程度は国も助成してくれるので、なんとか耐えられる。変わらずお金には困ってるけど、必死に逃げ回ってたころに比べたら幸せなもんだよ。