サービスを利用できる方法はあるが、現実的ではない

 母の介護は食事の支度、入浴・トイレの介助、買い物、洗濯、掃除、病院の付き添いなどだが、何より気を遣うのは食事の用意だった。食材の柔らかさや、味付けに気を配り調理するが、食欲のない母は、不満ばかりで幼児並みの量しか食べてくれない。また、買い物や母を病院に連れて行くなどの外出が大変だった。実家には父の車があるが、私は免許を持っていないため、タクシーを利用することが多くなった。次第に私のストレスがたまってきたため、使える介護サービスを活用することでストレスを軽減しようと考え、介護認定の見直しを申請したところだった。

 現状で母がデイサービスやショートステイ、訪問介護のヘルパーサービスを利用する方法がひとつあった。それは、私が実家に来ることをやめ、その後2週間、母の体調に変化がなければ、介護サービスを利用できるというもの。母が2週間ひとりでいられるくらいなら、わざわざコロナ禍に東京から通っているわけがない。介護サービスが利用できない要介護認定に本当にがっかりした。

 この周辺地域に私のように東京から介護に通っている人たちもいるはず、どうしているのか。

 三島市は、首都圏からのアクセスの良さと豊かな自然を間近に見られることが特長の町である。近年は全長400メートルの日本一の吊り橋ができ観光客も増加し、移住者も増えている。これは三島駅を利用している近隣の市町でも同じである。2015年には東京からの移住者は、三島市は約900人、函南町では約200人となっている。三島市在住で東京圏へ通勤している人も多く、2400人を超える(2015年国勢調査)。

三島駅前にある公園「楽寿園」。自然豊かな三島市は東京からの移住者も多い
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 三島市や函南町には、東京まで毎日通勤するビジネスマンのほか、観光バスやトラックの運転手で頻繁に東京に行く人もいる。その家族の中に介護が必要な人もいれば、成人して東京圏にいる子どもが親の介護に通ってきている家庭もある。

東京勤務の家族がいるとサービスを使えないことも

 ある家庭は、父親が毎日東京まで通勤していた。介護が必要な高齢者も同居しており、自宅で介護サービスを利用しながら家族が世話をし、将来的には老人ホームなどの施設に入居させることを考えていた。しかしコロナが感染拡大してからは、東京へ通勤する父親がいたため、利用していたさまざまなサービスが使えなくなってしまった。困った家族は、急いで施設を探して入居させることになったが、家庭内に東京勤務の人間がいると、すぐには入居させられないと言われたため、結局、父親は2週間、自宅以外の場所に宿泊しなければならなかったという。

 Hさんは周辺施設の対応について「行政、自治体からははっきりした指示がありません。この町だけでなく、他の地域でも同じです。初めはどこの施設も、他の施設の動向を伺いながら対応していました」と明かす。