3つ目のポイントとして挙げた“事務所の不祥事の歴史”については、酒井法子沢尻エリカを例として挙げる。

酒井法子が所属していたサンミュージックは、創業者の相澤会長の理念に基づき家族主義的な要素が強い古きよきプロダクションです。’09年、薬物騒動が起こった際、相澤会長は連絡がとれない酒井に対して、“法子が心配”という趣旨のコメントを発しました。これは過去に、岡田有希子、岡田と酒井のマネージャーを務めた溝口氏、双方が自ら命を絶っているため、もしかしたら……と考えたわけです」(宝泉氏)

 ところが、連絡をとらなかった理由が、行方をくらまして薬が抜ける時間を稼ぐためだったことが判明。大きな失望に包まれた。

「’11年には島田紳助が芸能界から引退しています。2010年前後は“反社”との関係が暗黙の了解だった昭和から続いてきた芸能の手法が終わりを告げたというか、通用しなくなった節目のタイミングではないか。酒井法子に関しては復帰うんぬんではなく、もう芸能界に未練はないのかもしれません」(宝泉氏)

 昭和の激動を駆け抜けてきた商店街の女店主が、時代の波を痛感してひっそりと暖簾を下ろす──そんな心境に近いのかもしれない。

事務所がタレントをコントロールできない例も

 そして、沢尻も事務所のトラウマを呼び起こす不祥事だった。酒井同様、’09年に世間を騒がせた薬物事件が、合成麻薬MDMAを服用し逮捕された『押尾学事件』だ。

「研音を辞め、フリーだった押尾を拾ったのがavexでした。沢尻もスターダストで扱うことができなくなり、avexが声をかけた。どちらもヤンチャなイメージがあるものの、avexは社風のイメージと合致するところもあったため、うまくプロデュースしようとした。ところが、コントロールできなかった(笑)。社風に合うと思ってヘッドハンティングした人材が思うように機能しない、というのは一般企業でもよくあるはず」(宝泉氏)

「avexは、広告やタイアップを巧みに利用し会社を大きくしてきた感があります。本人たちはイケイケな社風でも、NHKなどと仕事をするとなれば、周りに合わせなければいけない。avexはチームプレーが大事な企業なのに、沢尻は“個”が強すぎた。そういう意味では個人事業主のほうが向いているのではないか?」(中川氏)

 ヒールレスラーとして優秀だったとしても、リングの外でも暴れられたらたまったものではない。押尾の二の舞いにならないためには、「別に……」ですまさず、自身を自制できるかが命運を分けることになりそう。