“ひとごと”で終わらせない野木イズム

《その3》
生きて、俺たちとここで苦しめ
(『MIU404』最終回より)

 逮捕された久住(菅田将暉)に志摩(星野源)が放ったセリフ。脚本家のエスムラルダさんは、

「“俺たちと”が入っているところがポイント。決して“ひとごと”で終わらせない、自分を棚上げさせないという、野木イズムを感じます」

《その4》
俺はお前たちの物語にはならない
(『MIU404』最終回より)

 久住が逮捕後、自分の過去について志摩や伊吹(綾野剛)に聞かれた際に答えたセリフ。顔を覆いながら語る菅田の演技に唸った視聴者も多い。

あの日から菅田将暉に心を持っていかれたままです(笑)。野木さんは他人の行動に対して決めつけをしません。『アンナチュラル』でも連続殺人犯の殺人動機を成育歴と決めつける検事に対して“テンプレですね、何もわかっちゃいない”と返すシーンがあります。野木さんは決して一方的な見方をしない。久住に関してもそう。誰もが納得する理由なんて語れないし、その必要もないと教えられた気がします」(編集者)

《その5》
あなたの孤独に心から同情します
(『アンナチュラル』最終話より)

 石原さとみ演じるミコトが連続殺人犯の高瀬(尾上寛之)に言ったセリフ。その前に《あなたの気持ちなんてわかりはしないし、あなたのことを理解する必要なんてない。不幸な生い立ちなんて興味がないし、動機だってどうだっていい》とミコトが突き放す。

「誰かが事件や問題を起こすと、私たちはその原因や背景を勝手に想像し、決めつけてしまいがちです。しかしそれは、いたずらに他人の人生を消費することであり、本当のことなど結局、誰にもわからない」(エスムラルダさん)