散らかった部屋の横に
「整えられた新聞紙」

「布団周りの茶色いものは、体液ですね。その体液の中に剥がれ落ちた皮膚が混ざっていることもあります。死後、数か月が経つと、身体が溶けたような状態になって、皮膚も髪も爪も耳もズルッと落ちちゃうんです。警察は骨しか持っていきません

汚れた部屋の一方で、手前にはきちんと整理された新聞が(小島美羽さん作)撮影/齋藤周造
汚れた部屋の一方で、手前にはきちんと整理された新聞が(小島美羽さん作)撮影/齋藤周造
【写真】真っ赤に染まった風呂場、自殺した部屋など、今後紹介していく作品をチラ見せ

 畳の上にはベッタリと汚れのついた布団、そしてパジャマが置かれ、周りには弁当や酒のカップ、新聞などが散乱している。この作品は「50-60代男性の孤独死の現場」をイメージして作られた。

 小島さんが複数の現場で実際に見てきたものやエピソードが、1つの作品に凝縮されているという。

布団が中心の生活をしている人が多いので、手の届く範囲に物やゴミが散らかっているんです。孤独死ってアパートとかのイメージが強いかもしれませんが、このミニチュアのように実家暮らしで立派な家に住んでる場合も。ただ、親が他界していたりすると、ごはんも作らない人が多いので。それがわかるようにコンビニ弁当のゴミを散乱させました」

 弁当の中身は緑色。カビだろうか、発見されるまでの時間を物語る。

「発見されるまでの間にお弁当も腐るので。この作品にもある、競馬のハズレ券や新聞、アダルト本なんかも現場でよく見かけます」

 だが、その一方で廊下にはきちんと紐で結ばれた新聞も。

「最初は部屋をきれいにしていたけど、何かをきっかけに引きこもりがちになってしまった人って少なくないんです。ご家族の話を聞いていると、もともと真面目な方が多い印象があります。ただ、周りにSOSが出せない。生活が荒れていく様子を表現するのに、汚い部屋がある一方で、一部はあえて整理されている箇所を作りました

 近所とのコミュニケーションがないことから、悲しいことに、第一発見者や通報者は、近隣の人というよりは、たまたま通りかかった新聞配達員など“他人”が多いという。

「みんな見て見ぬふりなんですよね。なんか違和感を持ちつつも、関わりたくない気持ちがあるんだと思います」

 小島さん自身は、初めて現場に足を踏み入れたとき、“怖い”という感覚はなかったのだろうか。

第一に、一刻も早く片付けてあげたいって思いました。そういう気持ちが先走っていたので、怖いという感覚はなかったですね。あらかじめ本や写真も見ていたし、きついと言われるニオイも覚悟していたので。ただ虫が多いなって……。それらは写真だと伝わってこないので」