『天気の子』では、2000人以上のオーディション参加者からヒロインの座を勝ち取った森。大ヒット映画『君の名は。』(2016年公開)のヒロインから大ブレイクした上白石萌音を倣(なら)うように、“あの新海誠監督が見出した才能”を業界全体が追って起用する流れもあるようだ。

 今年1月公開の映画『ラストレター』で、同じくオーディションによって彼女を選んだ岩井俊二監督も映画雑誌のインタビューで、

《参考資料となる映像を見た時点で決まりというか、即“この子がいい!”という感じでしたね。森七菜ちゃんはいろんなものを持たされているなというのが第一印象でした。歴代のいろんな女優さんの顔がオーバーラップしてくるような、そういう意味で恵まれている子だなと思います》

 “即決”だったことを明かしていた。やはりクリエイターを惹きつける魅力があるのだろう。

恩師が見出した最後の才能

 一方で、広告会社関係者によれば、この2年間で彼女を取り巻く環境が大きく変化しているとも。

「たしかに七菜ちゃんは、ある意味で“いろんなものを持たされている”とも言えます。所属事務所の『アーブル』さんは、もとは2.5次元舞台の制作・プロデュースや音楽事業などを展開していた『アルテメイト』のマネジメント事業として立ち上げられました。

 社長を務めていた映像プロデューサーのKさんは、他にも広告やイベント、映像関連のキャスティング事業を主とした『ギャンビット』を経営していました。彼女の初写真集を出版したのも、このギャンビットです。

 そしてギャンビットと、音楽エンタテイメント事業を展開する『スペースシャワーネットワーク』、映画やドラマの企画制作を手がける『ダブル・フィールド』、そして大手アニメーション総合プロデュース会社である『トムス・エンタテイメント』が中心になって2013年に共同設立したのがアルテメイトだったのです」

 つまりアーブルは、アニメ、広告、音楽、映像の各プロフェッショナル企業による一大プロジェクト。その中心となってプロデュース業を手掛けていたのがKさんだったようだ。

「七菜ちゃんは映画『地獄少女』(2019年11月公開)に出演しているのですが、同作の制作総指揮を務めたのもKさん。“ちょいワル”でいかにもな業界人風でしたが、そうした豪快な性格の一方で、困った人があれば黙って助けるような人情があり、人望の厚い人でした。

 ですが、Kさんは昨年1月に病気で亡くなり、アーブルは独立する形で同年7月に改めて新会社として立ち上げられ、アルテメイトは2020年3月をもって解散しました。七菜ちゃんはいわば、Kさんが見出した最後のプロデュースタレント。彼にお世話になった業界人は多いと聞きますから、もしかしたら彼の“慧(けい)眼”を信じての起用、ということもあるのかもしれませんね」(前出・広告会社関係者)

 新海監督や恩師に見出された才能は、大きく花開くことになるのだろうか。