直木賞作家・桜木紫乃さん(56)は、麻紀さんと同じ北海道釧路市出身で、麻紀さんの少女時代から芸能界デビューまでの軌跡をモデルにした小説『緋の河』(新潮社)を上梓した。現在、『小説新潮』で続編を連載中だ。

「私は麻紀さんがモロッコから帰国したとき、地元の大人たちの反応をリアルタイムで見ていました。みんな寄ると触ると挨拶がわりに麻紀さんのことを話題にしてました。あまりいい語られ方をしていなかった場面も。そういうときの大人たちの表情は総じて卑しかったので、それだけ興味がある人をよく言わないというのは一体なんだろうなと、子ども心に思っていました」

 麻紀さんとは対談を機に、『緋の河』執筆と並行して、プライベートでも親交を深めていったという。

実際の麻紀さんは大人たちが言っていたような人ではなかった。孤高の人で、ものすごく繊細で。気働きというのはまったくかなわない。夜の街や芸能界で長く活躍するということはこういうことなんだなあと思いました

 “お前、コラ”という言葉も人前で求められているカルーセル麻紀を演じているだけで、本当はみんなのお母さんのような温かみがあると話す。

釧路は漁業と炭鉱の町で、わりと外から入ってくる人に対して開けている土地なんですよ。来るもの拒まず去るもの追わずという感じは、麻紀さんの包容力に通じるところがありますね。住みづらくて家出した場所だったかもしれないけれど、自分を貫く土壌というのは、生まれた土地にもあったと思いますしね

 麻紀さんがゲイボーイになった10代のころから知っていて、自身もゲイボーイとして名をはせた『吉野』のママこと吉野寿雄さん(90)も麻紀さんの心根をこう明かす。

意志が強いのよ。性転換手術をしたときも自分で決めて特別な相談はなかったわ。そういうところは男らしいの。男にモテたいから女になったけど、中身は男。ゲイボーイの心理というのはなかなか理解できないと思うわ。やっぱりどっかで男っぽさが出ちゃうのよ。私なんかもそうよ