多重債務の利息を社協の貸付で返済するという地獄

「また、社協の貸付を申請する人の多くは、すでにほかのカードローン、クレジット、リボ払い等も満額で借りている人が少なくない。社協の貸付を実際にほかの債務の返済に充てている人も多いと思われます。カードローンを含めた月の収支で組み立ててしまっている人が多いし、光熱費、携帯代金、家賃などのライフラインもクレジット払いにしている人も多く、社協の貸付が止まった途端にほかの債務の返済もストップし、ライフラインを断たれてしまうことに不安を感じている人も少なくないのです」(前出・社協職員)

 まるでアリ地獄のようだ。

「自殺者が多かった時代は多重債務による生活苦が主な理由でした。その再来がもう目の前まで来ているという感覚があります」

 そう述べる社協職員の表情が憂いと葛藤で曇る。

「償還免除」借りたお金の返済が免除になる条件とは

 借受人と世帯主が住民税非課税相当であれば、資金ごとに段階的に返済免除となる。返還免除と聞いたときには一瞬ホッとした。しかし、現実はそんなに甘くない。

 東京23区で暮らす単身世帯の場合、非課税の目安は、なんと年収100万円だ。月々の収入として考えると、そんなはずはないだろう? と数字を二度見するほどの低所得者でないと非課税にはならない。

 それも、借りている人間が住民票の世帯主であり、その上、非課税ならば免除の対象になるが、たとえば、実家の両親と同居している人がコロナで無職になって貸付を利用した場合、本人が非課税であったとしても世帯主である親に一定の収入がある場合、非課税にはならない可能性が高い。

 非正規で不安定就労の東京23区在住の単身者Aさんの月収が10万円前後だとする。この人がコロナ中に仕事を失っていて、社協の貸付を満額の155万円借りていたとしたら、その後の返済額は以下のとおりとなる。

緊急小口資金 月々8,300円の返済(20万円の24回払い)
総合支援資金 月々7,500円の返済(15万×6か月を120回払い)
総合支援資金の再貸付 月々3,750円(15万円×3か月を120回払い)

 考えてほしい。10万円前後の収入しかない人が、家賃も、税金も、携帯代金も払って、生きるための食事もし、加えて上記の返済をしたら、果たしてその人は生きていけるだろうか?