この夏、舞台『マミィ!』(7月30日~8月8日・赤坂レッドシアター)に主演する、女優の熊谷真実(61)。大ファンである劇作家・演出家の田村孝裕氏に「私を主役にした舞台を書いてください!」と熱烈アピールし、2年越しで実現したという。

「劇団ONEOR8を主宰する田村さんの舞台『漠逆の犬』を見たとき、『どうして、私が誰にも話したことがない気持ちがわかるんだろう』と衝撃を受けました。丸裸にされたような気持ちになったんです。田村さんの舞台を見ると、私が他人に見せない部分、自分でも気がつかなかったような心の奥底にある部分を掘り起こされる感じがします。

 私と同じような思いをする人が多いから人気があるのでしょう。それから『田村さんなら私が表で見せている顔とは違う部分を引き出してくれるはず』と確信し、『私のことを書いてほしい』と口説き倒したんです

愛人がいるのが当たり前の家庭

 2年前、田村氏に自分のこれまでの人生を語り、できあがったのが今回の舞台だ。

「放蕩を重ねていた父(佐藤B作)が、祖母(松金よね子)の危篤を知り、母(妻)である私の還暦祝いに帰ってくるという話です。『マミィ!』というタイトルは、母という意味ですが、私の名前でもあります。最初は仮タイトルでしたが、気に入って、そのまま使うことになりました」

 舞台は架空のストーリーだが、これまで語られてこなかった知られざる熊谷の苦悩が、そこには見え隠れする。

私のことを『明るい人』と思っている人は多いですが、その明るさの倍くらいの見えないバタつきを抱えていつも生きてきました。誰でも高いジャンプをするためには、長い助走が必要です。田村さんがそこをどう調理してくださったのか、ぜひ舞台でお楽しみください」

 小説『熊谷突撃商店』(ねじめ正一・著)でも描かれているが、熊谷の育った家庭には、苦労を明るく乗り越えてきた母親と、破天荒な父親がいた。婦人服の洋品店を経営していた父親は、なんと昔から愛人が複数いるのが当たり前だったという。

「お店の従業員にも父の愛人がいたりしたんですが、10代のころから、みんなが気まずくならないように家庭内を調整するのは私の役割でした。社員旅行のときに部屋割りを決めたり。私が愛人の方と一緒の部屋で寝るようにしたりとか。

 家族のピンチを乗り越えるために、いつも奮闘する私は、両親からも姉と妹(妹は女優・松田美由紀)からも頼りにされてきました。でもね、そういう調整ごとが、実はイヤではなかったんですよ」