ダライ・ラマと並ぶお坊さんに

 80歳を越えた今でも、ほぼ毎日2500~3000枚の護摩を焚き続けている。そんな氏のことを「スーパーマンですよ」と言うのは、元広島、阪神の内野手として活躍し、現役時代には2000本安打を達成した新井貴浩(たかひろ)(44)だ。

'04年のシーズンオフから護摩行に参加した元野球選手の新井貴浩
'04年のシーズンオフから護摩行に参加した元野球選手の新井貴浩
【写真】燃え盛る炎を前に、真言を唱える池口恵観

「僕は'04年のオフに、恵観先生と面識があったOBに“鍛えてもらってこい”と言われて、修行をしたんです。

 巻き上がる護摩木の火の粉で、顔や首、指やひざなんか、袈裟を着ていても水ぶくれになるぐらい火傷しました。護摩行は、野球をやっているときのキツさとはまったく違いましたね。死を感じるというか……。炎の前で真言を唱え続けると、酸欠になり、意識を失って倒れそうになるんです。味わったことのないつらさでした」

 それでもシーズンオフになると、池口のもとで護摩行をするようになった新井。

「護摩行をすることによって野球の調子が悪いときに“もうダメだ”ではなく“まだダメだ”と思えるようになりました。苦しくても次に頑張る、といった折れない気持ちや精神的な強さを養いました」

 精神力を養うことを求めて、池口のもとを訪れるスポーツ選手は少なくない。

 元阪神監督で“鉄人”こと金本智憲(かねもとともあき)(53)もその1人だ。

'99年から通ったという金本智憲
'99年から通ったという金本智憲


「僕が先生のところで護摩行を行ったのは、野球の技術向上や成績よりも、打席に立ったときの“ここ一番”の場面で、ピッチャーの手元から目をそらさないといった集中力を鍛えることが目的でした。

 “熱くても炎から目をそらさない”という苦しいときに集中することが、ここ一番の打席に入ったときの集中力と共通すると思ったのです。そうした“集中力”を高める目的は、達成できたと思います」

 新井や金本のように野球界のみならず、相撲界にも池口のもとで護摩行を行った人物がいる。モンゴル出身力士のパイオニアであり、現在はモンゴルで実業家として活動する元旭鷲山(きょくしゅうざん)(48)だ。

「知人の紹介で先生と知り合ったのですが、私は初め、先生のことは信じていませんでした。ですが現役中に身体を壊し、何連敗かして次に負けたら幕内から陥落という大事な一番を迎えたことがあったんです。しかも相手は大関。そのとき、ふと先生のことが頭に浮かんで……。

 藁(わら)にもすがる思いで取り組み前日に先生のもとを訪ねたのですが“大丈夫、心配ない。護摩を焚いてやるから俺に任せて、今日はゆっくり寝ろ”と。半信半疑でしたが翌日、取り組み相手の大関が突然、調子が悪くなって休場したんです。驚いて、それから先生のことを信じるようになり、護摩行をやるようになったのです」

 それ以降、旭鷲山は交流を続け、池口はたびたび渡蒙(ともう)。戦没者、戦争犠牲者の慰霊法要および世界平和祈念を行い、モンゴルの“マンホールチルドレン”や現地の寺院に寄付を続けた。

先生のそうした社会貢献が新聞に取り上げられ、モンゴルでもチベットのダライ・ラマと並び称される有名なお坊さんになったんです。モンゴルと日本の国交30周年記念の際は切手にもなりました。日本人なのにモンゴルや北朝鮮のことを考えたり、普通の日本人の感覚じゃないんです」