不倫相手の環境の変化がもたらした“結末”

 充実した日々を送っていた環奈さん。ところが不倫相手が50歳になると、現場から離れて内勤に。すると、暇になった彼から毎日のようにLINEが届くようになった。

「頻繁に食事の誘いがありました。でも私のほうは人事異動で部署が変わり、面倒を見なければならない部下が増えて残業も多くなったので、彼のお誘いも断るようになったんです」

 さらに彼は部内の権力闘争に巻き込まれ、敗北。翌年には社史編纂という閑職の部署に飛ばされてしまった。

「彼はプライドが高いので、異動を話してくれたのはかなり時間がたってからでした。きっかけは70歳以上の高齢男性と、うまくコミュニケーションをとる方法を彼から聞かれたときでした。

 様子が変だったので“どうしたの?”と尋ねると、社史編纂室には、70代の元社長と元会長の2人の長老のほか、60代の男性が在職し、50代の自分が“若手”だと自嘲していたんです。その様子が明るい彼から想像できなくて。慰めていいのかどうかも迷いましたね」

 少しずつ不倫相手の彼との間にすきま風が吹き始めたころに、世の中はコロナ禍になってしまったという。

「私の仕事はPC1台あれば、どこでもできます。また、人材育成も担っているので、在宅でできる育成プログラムの作成などの仕事が増えました。コロナ禍でも忙しかったですね」

 一方の彼もリモートが進み、在宅での仕事が増えたという。子どもたちが大学を卒業し、社会人になり家を出たことで、家の中の雰囲気も変わっていく。妻と家で過ごす時間が長くなるうちに、夫婦仲が悪化していったのだ。このことが環奈さんとの関係にも大きな影響を与えた。

「彼から私と過ごす時間が愛おしいと、毎日のようにLINEが届きます。コロナで飲食店が休業したり時短になったため、デートする機会が少なくなると、私のマンションで、私の手料理を食べたいと言いだすんです。不倫相手の彼を自宅に招きたくないので“奥さんに食事を作ってもらって”と断ると、彼は“今まで君に尽くしてきたのに”と不平不満をLINEで毎日送ってきて……。困っています」

 男性は10年も付き合ってきたのにとグチり、

「そんなひどいことを言うなら付き合った10年を返してくれ」と逆ギレしたり、「妻と別れるから結婚してくれ」とプロポーズするなど、居心地のよかったはずの彼との関係が壊れていくのがわかった。

 どうしたものかとため息をつく環奈さん。非婚を決めて不倫相手と楽しい時間を過ごしてきたが、付き合いが長くなると、相手の人生にも深入りしてしまうことに気づかなかった。愛人関係も長くなると、ドライに割り切れるものではないのだろう。

不倫相手とも別れて、正真正銘、ひとりで生きていくつもり。彼がすんなりと別れてくれるとは思えないけど」

 コロナが収束するまでの間、彼をなだめようとしているが、「それも面倒」と環奈さん。彼との関係は、彼女の中ではとっくに終わっていた。彼がこの事実に気がつくとき、環奈さんが手にするのは「自由」かそれとも……。


寄稿/夏目かをる:コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマンの取材をもとに恋愛や婚活、結婚をテーマに執筆活動を。自身の難病克服後に医療ライターとしても活躍。