聖子の知人もこの不幸に遭った

「聖子は、この事故に非常にショックを受けていました。それに坂本九さんや電通の須貝和郎さんなどお世話になった方が乗っていると知って、非常に動揺していました」

 サンミュージックの森口健専務は、日航機事故を知った聖子の様子をそう語る。

 聖子は、坂本九さんとは、5年前デビューして以来のお付き合いだった。

 また、電通の須貝さんは、CMで聖子がお世話になった人である。

 それだけに、この事故は彼女にとって他人事とは思えない悲しい出来事であった。

 “悲報が事実なら、お花を贈って欲しい”とあわてて聖子は電話もしている。テレビのニュースを見ると、毎日涙がこぼれたという。

「そんなときA子ちゃんがファンだということを知ったんです。ひと言でも声をかけて元気づけられたらという気持ちから聖子はテープを贈ったんです。でも、ご両親、妹を亡くしたA子ちゃんの立場を考えると、どんな言葉も励ましにならないんじゃないかと、ずいぶん悩んだようです」

 森口専務の言葉である。

 悩んだ末に、聖子は、正輝に相談した。

「わたしの励ましが、少しでもA子ちゃんを元気づけられたら……」

 という聖子の言葉に、正輝も、

「キミの励ましで少しでも元気になるのなら、いいことだと思うよ」

 と、賛成したのである。正輝も、ファンであるA子ちゃんを思う聖子の心に動かされて、自分がDJを受け持つラジオ番組(8月31日放送)を通じて、事故に遭った人々へ追悼の祈りを捧げた。

 TBSラジオ『神田正輝のポップロード』で、正輝はこう語った。

「悲しい思いをされた方はたくさんいるし、ボクも悲しい。でもそのなかで、奇跡的に4人の方が生還しました。

(生存者の名前を挙げ)とても辛いだろうけど頑張ってください。悲しみは長い時間の中でも、軽減はしないと思う。でも強く生きて……」

 この正輝のDJに聖子も「どうか一生懸命生きてください」と伝言を託している。

《『週刊女性』1985年9月10日号より》