図3(東洋経済オンライン)
図3(東洋経済オンライン)
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 ところが、日本はいまだに検査を抑制している。図3は主要先進7カ国(G7)および台湾の検査数の推移だ。日本の人口1000人当たりの検査数は0.71件(8月11日)で、最も多いイギリス(10.97件)の15分の1だ。

 さらに、注目すべきは台湾(0.79件)の検査数にすら劣ることだ。水際対策に成功してきた台湾は、国内に感染者がいないため、検査体制を強化してこなかった。ところが、国内に感染が拡大した5月以降、検査体制の整備に乗り出し、わずか2週間で日本の検査数を追い抜いた。そして、約2カ月で感染を収束させた。

 このことは、その気になれば、検査数は容易に増やすことができることを意味する。日本政府は意図的にサボタージュしていたのか。感染症対策の基本は検査・隔離だ。基本を外した対策は失敗する。

クラスター対策にいつまでこだわるのか

 検査体制だけではなく、クラスター対策も的が外れている。厚生労働省は、3密(密閉、密集、密接)を問題視し、全国の保健所を動員して、濃厚接触者探しに明け暮れた。コロナ感染症対策分科会の委員を務める押谷仁・東北大学大学院教授は、2020年3月22日のNHKスペシャル『“パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~』に出演し、「すべての感染者を見つけなければいけないというウイルスではないんですね。クラスターさえ見つけていれば、ある程度の制御ができる」と述べたくらいだ。

 ところが、後述するように、コロナ感染の主体は、いまや濃厚接触者からの飛沫感染ではなく、空気感染であることが明らかとなっている。両者の予防に必要な対応は異なる。クラスターさえ見つけていれば、制御ができるという発言は科学的に間違っている。

 しかるに、厚労省はいまだに方針転換をしていない。厚労省の「新型コロナウイルス感染症対策」というサイトには「変異株に対応するための感染対策」として、「マスク着用、手洗い、『密』の回避など、基本的な感染対策の徹底をお願いします」とあり、申し訳程度に「室内では換気をよくして」と書かれている。