いったい二人に何があったというのか──。取材を進めると、二人が別居を始めたのは、離婚のかなり前であったことが判明する。容疑者はA子さんの自宅から約6km離れた同県西宮市に住んでいた。A子さんが住んでいたオートロック付きのマンションと比べると、やや古めかしいマンションだ。そこの住民は、容疑者をほとんど見たことはないと断ったうえで、こう証言する。

「確か2年ほど前に引っ越してきたと思います。うちと同じ広さなら、家賃は4万円くらいでしょう」

 とすると、離婚の1年以上前から別居状態にあったということになる。

「A子さんからすれば、1年経ってようやく容疑者と離婚できたという思いがあったはずです」(前出・社会部記者)

 しつこく復縁を迫る容疑者からようやく逃れられる──。そんなA子さんの思いも空しく……。

「待ち伏せしていた容疑者に襲われて、命を落としました。動機について、容疑者は“復縁が思うようにいかなったから”と捜査関係者に話しているそうです」(同・社会部記者)

 2年間の別居期間が、容疑者の憎悪を膨らませたということなのか──。

容疑者の同級生は「まったく覚えていない」

 前出の住民に容疑者の印象を聞いてみると、

「印象? まったくないんだよね。強いて言えば、おとなしくて、真面目そうな感じだったかな」

 容疑者が一人暮らしに選んだ場所は、彼の生まれ育った土地だった。かつてあった実家を訪ねたが、十数年前に転居していたため、周囲の誰も森本一家のことを覚えていなかった。地元の中学校の同級生を取材すると、彼らはこう口を揃えた。

「彼のことはまったく覚えていない。いたかどうかも……」

 よほど印象に残らない存在だったのだろう。

 影の薄い男が起こした元妻への凶行は、あまりにも理不尽な動機だった。釈然としない、むごい事件である。