国内では100万人以上の患者が存在し「国民病」とも呼ばれる脳卒中。だが、脳卒中に罹患した人は死亡したり重篤化したりするケースが多いのか、経験者の体験談を耳にする機会が想像以上に少ない。今回、脳卒中のひとつである小脳出血で手術、入院を経験した男性が入院中や退院後に、その身に起こったすべてを包み隠さず話してくれた。症状に仕事、そしてお金……。脳卒中になると一体どうなってしまうのか。

突然襲いくる脳卒中という病

健康診断や人間ドックでおかしな数値が出ることもなく、体調が優れないということもなかったので、まさか自分が脳卒中、それも小脳出血になるとは思ってもみませんでした

 ゆっくりとそう話すのは、東京都内在住の弁理士、岡崎信太郎さん(64歳)。うまく話せないのは小脳出血の後遺症の影響だという。

「50代で仕事も順調。これまで以上に顧客を増やしていこうと思っていた矢先のことでした」

 岡崎さんは早稲田大学教育学部を卒業後、製薬会社に就職した。しかし職場にうまくなじめず退職。その後、たまたま特許事務所に勤めることになったのだが、「発明」を扱う業務に興味を持つ。

「特許や商標の手続きを行うには弁理士の資格が必要です。勉強するのは嫌いだったのですが、どうしても特許の仕事がしたいと思い、猛勉強して弁理士の試験に合格しました。30歳になるころのことでした」

 弁理士になった岡崎さんはしばらくして独立、自分の特許事務所を開設した。その後、特許の出願だけではなく万が一訴訟になったときもワンストップサービスで対応できる事務所を目指し、ほかの弁理士や弁護士たちの事務所とも合併。誰もがその社名を知るような企業を顧客に持つなど、仕事は順調そのものだった。

小脳出血を発症するまで約30年間、弁理士として働いていた岡崎さん(岡崎さん提供)

 これまで以上に顧客を増やしていきたい。さらに仕事の規模を拡大しようと意欲に燃えていた岡崎さんを脳卒中が襲う。正月休みが明けたばかりの2016年1月5日、58歳のときだった。

仕事を終えて家に帰り、入浴中のことでした。突然景色が横に流れていき、動けなくなったのです。浴室にしゃがみ込んでしまって、右側にはタオルなどがかかっていて左側には浴槽があるはずなのですが、景色が流れてうまく確認できませんでした」

 あとでわかったことだが、右小脳の血管が破れて「小脳出血」を発症していた。

浴室のドアを開けて座っていると、異変に気づいた妻が来て『救急車を呼ぼうか?』と尋ねてきました。断ったのですが、その後気持ちが悪くなって洗面器の中に嘔吐しているうちに、気が遠くなってきました。結局、妻が救急車を呼んでいたみたいで、遠くで息子の話す声や、救急隊員の声が聞こえてきたのを覚えています」

 その後、救急車で搬送されたが、途中で岡崎さんは意識を失う。次に目が覚めたのは病院のベッドの上だった。

「最初は自分がどこにいるのかわかりませんでした。意識を失っている間に開頭手術を受けたのですが、それもあとで医師から聞きました」