しかも未就学児のワクチン接種は3月まで開始されず、蔓延しやすい可能性もあります。学級閉鎖や学年閉鎖・休校が長引くと、保護者のイライラも頂点に。何とか1日だけ踏ん張ろうとやりくりしたのが、3日に延びたりすると、決定権者に怒りの矛先が向かってしまうことも。

共働き、シングルの親にとって休校、休園は切実な問題(※画像はイメージです)
共働き、シングルの親にとって休校、休園は切実な問題(※画像はイメージです)
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 ではその措置や日数はどう決まるのでしょうか。文部科学省は昨年8月、第5波の際に「学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルスの感染が確認された場合の対応ガイドライン」を、地方の教育委員会に通知しました。この中に学級閉鎖・休校を判断する基準についても触れられています。つまり公立学校の長は通知に基づいて対処するため、問題が発生しても「上が決めた事に従っただけ」と責任を回避できます。

 就学前の保育園や認定こども園は、公立なら小学校と同様に、地方自治体の方針に則ります。私立の園であっても、保護者は自治体と利用契約をしており、自治体の委託を受けて保育する仕組みなので、公立の園に倣います。つまりこちらでも「上が決めた事に従っただけ」という言い分が通るのです。

 それに引き換え、ほぼ知られていませんが、私立幼稚園だけは独自の立場に置かれています。れっきとした学校法人が設置主体であり、各園が切磋琢磨しながら教育を行います。学校教育法27条は、園長は園務を司る、と規定していますが、園務掌理権と呼ばれます。校長の校務掌理権と同義で、出席停止の権限を持ちます。先述したように、各家庭をリスクに晒す重い決断を、一個人が負わねばならないのです。

幼稚園が保護者に責められてしまったケース

 新規陽性者が出たある園は、10日間の休校を決断しました。人間関係が濃密な地方では、感染者が特定されると白い目で見られることもあるのです。1月14日に厚生労働省が緩和した、濃厚接触者の待機期間10日間(現在は7日間に短縮。またいわゆる「エッセンシャルワーカー」については、最短で5日目に)を費やすことで、感染防止と第1号の特定を防ごうとしたのです。

 当初は英断とされましたが、無症状者が多い傾向が分かるに連れ「何故、学級閉鎖に留めなかったか」「10日は長過ぎる」と非難が渦巻き、園長は辞任の瀬戸際に立たされてしまったのです。

 逆のケースで、「何故、すぐに休校の判断をしなかったのか」と保護者に責め立てられた幼稚園もあります。感染者が出た場合、濃厚接触者の特定は保健所の疫学調査によりますが、業務が逼迫し、迅速な判別は不可能です。中にはていよく、疫学調査そのものを園側が行うと方針変更され、責任転嫁された例もあります。

 そして「我が子は大丈夫かしら」とパニックになった保護者の矛先が園に向かってしまったのです。仕事先の死守と、預け先の両親の命が掛かった母親も必死なのです。

 これが子育て現場のリアルであり、親御さん達も園も、一本の電話に戦々恐々とする日が続いているのです。