ぱっと考えただけでも次の論点が浮かぶ。

■大学での講座という空間であったとしても、あまりに無防備な発言ではないか■SNS等で拡散されてもかまわないという覚悟がなかったのではないか
■地方にも吉野家はあるはずで都市との比較は不適切ではないか
■女性蔑視は当然の問題として、男性が女性に食事を奢る、という構図自体が考えの古さを表していないか
■言葉・表現の選択の問題ではなく、消費者が無知ゆえに企業は儲かる、という思想自体が倒錯していないか

 そして実際に上記の観点からの批判が巻き起こっている。とくに吉野家はサステナビリティの考え方として<ダイバーシティ&インクルージョンを実現し多様な「ひと」が活躍できる職場づくり>を掲げている。先の発言は、この宣言からも乖離しているのは明らかだろう。

 とくに取締役は株主から(形上であっても)選ばれた会社の経営陣にほかならない。同社のプレスリリースには「人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」とあるものの、会社の上層部がこのような人権感覚なのだ、という印象は拭えないだろう。

シャブ漬け発言の何が問題か

 なお私の経験でも、マーケティングの講義では「(自社サービスの)蟻地獄に落ちてもらう」といった発言は聞いたことがあるし「若い頃から餌付けをして、ファンになってもらう」といった表現も聞いたことがある。

 ところで先の、吉野家の常務取締役の発言について、私が問題と思う点を述べる。

1.高い食事を知ると、牛丼を食べなくなる

 →これは逆に言えば、価格以外の優位性がないと自ら表明していることになる。これはマーケティングの講義として逆効果ではないだろうか。価格以外の強みがないものを、マーケティングだけで訴求するとしてしまっている。個人的には吉野家を相当に愛好しており、味をもっとPRしたほうがいいのではないか。