年齢を感じさせない美しさの理由

 今年9月の誕生日で75歳を迎え、世に言う後期高齢者に仲間入り。だが肌は白くもちもちで、きめ細かさは驚くほど。手にはしみひとつ見当たらず、年齢を感じさせない美しさだ。これらは全て“投資”の成果だと話す。

「肌は若手の女優たちにも褒められるの。なぜなら若いうちから磨きをかけたもの。若いころの趣味はエステで、月に1回あるかないかのお休みの日はいつも自分磨きに使ってた。当時エステといえばメイ牛山さんか山野愛子さんだったから、お休みの度に毎回全身エステをしてもらって、脱毛にも通ってーー。

 でも最近はエステより鍼や整体などもっぱらメンテナンスよ。役者の友達に会うと、どの薬がいい、サポーターはこれがいい、腰痛がどうだのと、そんな話しかしないんだから。本当にこの物語と同じなのよ(笑)」

「あなたが死んだら死後離婚するからね」

 作中描かれるハナと岩造の関係は、まさに長年連れ添った理想の夫婦像だ。いつも華やかなハナに対し、夫の岩造は「お前は俺の自慢だよ」とテレもなく口にする。ところが岩造亡き後、愛人と隠し子がいたという衝撃の事実が発覚。初めて知る夫の真実に大きな衝撃を受けるも、泣き暮らすようなハナではない。

 愛人と隠し子の前で毅然とした態度を取り、亡き夫に対し「死後離婚」を突きつける。死後離婚とは配偶者の亡き後婚姻関係を終了させる手続きで、届出により相手方の血縁者との関係を断ち切ることができる。ある意味死後のリベンジで、

この言葉は本を読んで初めて知ったけど、痛快よね。結婚している女性なら誰でもその気持ちがわかるはず(笑)」と共感の思いを口にする。

「うちの夫に“今度こういう作品をやるの。原作読んでみて”って渡したら、“すごく面白いね!”だって。“あなたが死んだら死後離婚するからね!”と言ったら、“そうなの? でも僕はそのころにはもう死んじゃってるんだから別にいいよ”なんて言ってたけれど。

 夫との会話はまずそれ。本人は自分がしたことをすっかり忘れているんだから、いい気なものよね(笑)。本当にハナとはいろいろな部分で重なるの」

 ピン子自身、結婚6年目の'95年に夫に隠し子がいることが発覚。ワイドショーを大いに賑わせた。週刊誌のスクープを受け、急遽開いた会見には約100人の報道陣が殺到。詰めかけた記者の前で、「夫を許します」と涙をこぼした。実はあの“号泣会見”は脚本家・橋田壽賀子さんの肝入りだったと明かす。

「私が夫からもらったラブレターをいっぱい持っていって、“こんなに愛されてました”と言って泣いたけど、私も女優だから泣いてるうちに気持ちが入ってどんどん涙が出てきちゃった(笑)。女性たちの同情を集めるからと言われたけれど、まったく逆効果。後で考えるとバカみたいだし、今だったら絶対にあんなことしないわよね。でもあの当時は、芸能人が会見でそこまでしないと許されない時代だったから」

 当時の騒動は凄まじく、体重は38キロまで落ち、円形脱毛症も患った。しかしあれから27年の月日が経った今、

「もうずっと昔の話。気にしてたらこの仕事も受けてないわよ」と懐深く笑い飛ばす。