目次
Page 1
ー 「手洗い」で深部体温をぐっと下げる効果が
Page 2
ー すぐに始めたい汗をかく習慣
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ー 水分補給は1日8回、渇きを覚える前に

 

 梅雨明けとともに連続の猛暑日が続き、最高気温が40℃を超える地域も。そんな中で、高齢者や子どもはとくに注意したいのが熱中症。何か良い予防策はないものかと探していたところ、「手のひらには体温を調節する特別な血管があります」と専門家。手洗いだけで暑さ対策になるというから、耳よりな話ーー。

 今年は例年よりも気温が高くなると予想され、室内外で熱中症の危険が高まる。

 熱中症は、体内の水分と塩分のバランスが崩れることや高温多湿な環境に置かれることで、体温管理機能がうまく働かなくなり、さまざまな症状が生じる状態のこと。暑いなか、立ちくらみや筋肉痛に近い症状を感じたら、軽度熱中症を疑いが。症状が進んでいくと、頭痛や吐き気、倦怠感などが表れ、重症になると意識障害やけいれんが起こることもある。そして、最悪の場合、死に至る。

「手洗い」で深部体温をぐっと下げる効果が

 熱中症にかからないために大切なのは体の温度を上げないこと。そのためには、体を冷やすことが効果的だ。

 冷やす部位は首や足の付け根といった血流の大きなところ。そして「手のひらがおすすめです」と語るのは、熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師。「手のひらにはAVA(動静脈吻合)と呼ばれる特別な血管があるんです。これは動脈と静脈を結ぶバイパスのような血管で、普段は閉じていますが、体温が高くなってくるとAVAが開通し、一度に大量の血液を通します。そうすることで熱が放出され、冷えた血液が体に戻り、全身をクールダウンさせます

 ある研究によると「首・脇の下・そけい部」を冷やしたときよりも、AVAの多い「手のひら・足の裏・ほほ」の3点を冷やしたときの方が体温を低下させる、という結果が得られた。つまり手のひらは最強のラジエーターなのだ。

 やり方は簡単で、手のひら(可能ならひじまで)に水道水を15秒ほど流すだけ。つまり、普段の手洗いを少し念入りに行うだけで、新型コロナの予防と同時に熱中症対策が可能だ。

 もちろん、冷やす時間を長くすれば、効果をより実感できる。長時間冷やす場合は、桶やバケツに水を張り、5~10分ほど手を水に浸けておくといい。

あまりにも低い温度、例えば氷水などはおすすめできません。15℃ぐらい、ひんやりで気持ちいい、という温度がいいでしょう」(谷口医師、以下同)

暑い日は首元を冷やすのが常識だった…(写真はイメージです)
暑い日は首元を冷やすのが常識だった…(写真はイメージです)

 タオルを巻いた保冷剤などを握っても効果があるのかと思いきや、それは逆効果。

「手のひらは動脈と静脈が交わるとても血管の多い場所。そのため冷やしすぎると、冷たくなった血液が体全体にめぐり、血管が収縮してしまいます。そうなると効果が得られない場合もあります」

 冷えたペットボトルを手に持つのでもいいが、その場合は冷蔵庫から出した直後だと5度前後となり、冷たすぎるので、しばらく室内に置いて温度が上がったものがいい。

 すでに頭痛や吐き気、めまいなどの熱中症の症状が出てしまっていたら、冷やすのは首や足の付け根を集中的に。医療機関への搬送の目安としては未開封のペットボトルを渡し、自力でキャップを空け、しっかり飲むことができるか。手に力が入るか、口にペットボトルの先を持ってこられるか、むせずに飲めるかで状態をチェックすることができる。うまくできない場合は、医療機関へ。