『歯科インプラント』に“トラブル続出”報道に

 もちろん設置場所などは真剣に考えるが、内容・デザインには“遊び”が生まれた。しかし、一方で身内である家族からは否定や不満を投げかけられることも。確かに肉親の顔が至るところに看板としてあることは、家族としては思うところがあってもおかしくはない。しかし……。

夢を叶えるにしても仕事にしても、家族に反対されても、それでも“行く!”って奴じゃないと成功しない。成功しないというか、それで初めてスタートが切れる。成功するかはわからないけどね。これは昔、人から聞いたことがありましたが、看板をやってわかりました。この間、都心にマンション買おうかなって言ったら、(家族に)すげぇ反対されたんですよ。“なんの意味がある”って。それでやめたんですけど、看板はやめられなかった。(家族にどれだけ反対されても)一切やめる気はないですね(笑)」

 それほどまでに強い気持ちを看板に費やすには理由がある。'12年にNHKの番組が『歯科インプラント』にトラブルが続出していると報道した。きぬた歯科はインプラントに力を入れていたが、その影響で他の歯科医院同様にインプラントの患者が激減。

(番組の影響で)患者さんが来なくなって……。でも人間って追いつめられるとすげぇ力が出るんですよね。追いつめられたら(顔を出すのが)恥ずかしいとか言っていられないんですよ。火事になったとき、“パンツ一丁で外出られねぇ”とか言っていられないじゃないですか。死にますから。看板の設置はパンツ一丁で外に行くような、そんな気持ちでやっていましたね

 院長が死にものぐるいで建て続けた看板は、きぬた歯科から独立した歯科医院が“師匠”のマネをしたり、まったく関係のない歯科医院にパクられるほどの“フォーマット”となった。同じように院長の顔が出た派手な看板だ。

「最初からこの状況は読んでいたんですよね。顔出し看板って見る人も慣れてくるんで、いずれ追随する人が出てくる。それでいいと思っていたんです。というのは、そういったほかの顔出し看板は、結局きぬた歯科の宣伝になってくれるからです。他の顔出し看板を見ても、きぬた歯科を思い浮べるんです」

 顔出しの看板は他の追随を許さないほどの数を建てた。他が追いつけないほどの数を建てるまで「看板はロマン」などと“おかしな院長”を演じ続けた。それがついてきた“ウソ”だ。効果があることを知られたくなかったからだ。

「もうほかは真似できない数だし、パクってもきぬた歯科が浮かぶレベルになったので、“言っていい”かなと。本当に先行者利益ですね」