セクハラで笑いを取るのは普通

「入ったばかりでまわりには男性の先輩がほとんどの中、セクハラが待っていました。“おっぱい大きいね”とか“しゃぶってよ”と声をかけられたり。廊下を歩いていると、すれ違いざまに男性隊員が私に抱きついてきたことも。

“柔道やってるんでしょ”と声をかけられて、柔道技をかけられて、そのまま背後をとられて腰を振られるという。そういうことが日常茶飯事。ほかの部隊の人が見ていてもお構いなしでした」

 その部隊では“セクハラで笑いを取るのは普通”という雰囲気だったという。

セクハラの主犯格は『三曹(さんそう)』という役職付きの人たちでしたが、さらに階級が高い一曹や二曹からも被害を受けていました」

 入隊から約1年後、2021年6月24日、山岳地で行う訓練の際にもセクハラを受けた。

五ノ井さんがセクハラを受けている最中に送信した、先輩隊員に助けを求めるLINE
五ノ井さんがセクハラを受けている最中に送信した、先輩隊員に助けを求めるLINE
【写真】先輩女子自衛官に助けを求めるLINE

先輩の男性隊員たちのテントに入って、私が料理を作るという仕事があったのですが、そのときに2人の先輩から胸を揉まれ、頬にキスされ、下着の上から相手の股間を触らされました。これは長時間続き、消灯時間が過ぎても終わりませんでした。

 先輩の女性隊員にLINEで助けを求めましたが、先輩も以前からセクハラを受けており、怖くて助けに来れなかったそうです」

 このセクハラは上官に告発があり、問題になったというが……。

「誰が告発したのかという犯人探しが始まりました。“五ノ井が言ったんじゃないか”と思われて、部隊の雰囲気は悪くなるし、私も居づらくなりました。

 ただ、当時の私には“体育学校に行きたい”という目標があり、9月に試験を受ける予定がありました。なので、上司からの聞き取りに“何もありませんでした”と答えました」

 こうしてセクハラに耐えていた五ノ井さんだが、8月に決定的な事件が起きる。