ラーメンは繁盛店ほど危険?

 ラーメンにおいては“繁盛店ほど危険”なこともあるという。なぜか?

「繁盛している店はチャーシューを含めた具材をその都度調理、カットするのではなく、まとめて仕込み、提供時にラーメンにのせます。冷房を効かせていても厨房はものすごく暑い。その状況下に食品を置いていたら……。さまざまな菌が増殖する可能性が高いことは容易に想像できると思います

 低温調理によるチャーシュー作りは、プロだけでなく一般にも浸透してきている。ネットで検索すれば多数のレシピがヒットする。

「“危うい”ものも少なくない。ただただ“この温度で何分加熱する”だけでは安心とはいえないわけです。ネットのレシピを鵜呑みにして、同じようにやれば大丈夫と考えるのは危険だと思います」

カンピロバクター怖いのは食中毒後

「新鮮だから大丈夫」は大間違い!(※画像はイメージです)
「新鮮だから大丈夫」は大間違い!(※画像はイメージです)
【写真】食中毒被害を出したお店の“生肉”が載ったラーメン

 今回の食中毒は保健所の調査によって『カンピロバクター』が原因とわかった。

「カンピロバクターは、鶏の腸管にいて、食肉にするための解体の際に肉の表面を汚染します。この菌は“らせん状”の形をしている。それにより“肉の内部に潜り込む”得意技を持っています。そのため表面を殺菌しても安心できないのです。サルモネラ菌などは中に入らないので、表面を焼けば危なくないといえますが」

 そう話すのは、食中毒に詳しい新潟薬科大学名誉教授の浦上弘氏。どの程度の鶏肉がこの菌に汚染されているかというと、恐ろしい数字が……。

「鶏の50〜70%にカンピロバクターがいるといわれています。この数字は肉の処理場の調査によるもの。すごくばらつきがあるのですが、ひどいときでは100%ともいわれます。“生食は無理”ということです」(浦上氏、以下同)

 カンピロバクターは、生きていくのに薄い酸素が必要で、最適な濃度は5%程度。空気中の酸素濃度20%では死滅するという。しかし、肉の内部に侵入するので、多少空気にさらしても、湯通しして表面を殺菌しても安心できない。中途半端に加熱して、中が生の鶏チャーシューは……言わずもがなであろう。

「“新鮮だから大丈夫”と言って表面を軽く加熱しただけで中は生状態の鶏肉を提供する店があります。カンピロバクターは酸素濃度が20%では生きづらいですが、中に入ってしまう。新鮮であればより生きている可能性が高い。“新鮮だから危険”といえるわけです。表面を焼いただけでは不十分です。原因となる食品は、鶏刺し、鶏わさなどの生肉。また、生の鶏肉を扱ったキッチンでの汚染です」