奥田さんの手法は「叱る代わりに無言で“タイムアウト”」

敷地内にある奥田さんの自宅の研究室。本や資料が壁一面にずらりと並ぶ。見た目と違って「古い習慣で、なるべく図書館で借りたくない」
敷地内にある奥田さんの自宅の研究室。本や資料が壁一面にずらりと並ぶ。見た目と違って「古い習慣で、なるべく図書館で借りたくない」
【写真】“ブラックジャック”の異名が似合う!世界に1つしかない「メガネ」をかけた奥田さん

 奥田さんの使う手法は常識とは逆だ。スタッフは泣いている子には背を向けて、機嫌よく遊んでいる子の相手をする。ケガをしたときなどを別にして、泣いて要求した場合は相手にしない。かんしゃくによる交渉は無駄だという経験を積み重ねることが大事だという。

 それでも泣き続ける場合は、パズルなど単純作業をやらせる。何かに打ち込むと気持ちを切り替えやすくなり、いずれ泣きやむ。

 他にも普通の幼稚園とは異なる工夫があちこちで見られる。おもちゃの片づけや着替え、お弁当の時間にはビジュアルタイマーを活用。決められた時間内に終わるとお菓子やシールなど、その子が好きなごほうびがもらえる。《行動した直後にいいことがあると人はその行動を繰り返すようになる》という行動原理を利用した方法だ。

「コラー、やめなさい!」

 そんなふうに子どもを叱る教員の声も一切聞こえない。叱る代わりに、無言で【タイムアウト】という手法を使うからだ。

他の子を叩いたり暴れたりが頻発する場合はパーティションで囲った小部屋(写真手前)で、1人で遊ばせる
他の子を叩いたり暴れたりが頻発する場合はパーティションで囲った小部屋(写真手前)で、1人で遊ばせる

 暴力を振るったり、大声で暴言を吐いたりするなど、社会的に受け入れられない行動をした際、その子どもを遊び場からサッと引き離し、部屋の隅の椅子に座らせて数分後に戻す。他の子を叩いたり暴れたりが頻発する場合は、パーティションで囲った小部屋に入れて1人で遊ぶスキルを身につける。再び同じ行動をしたら、またタイムアウト。直るまで繰り返す。体罰は絶対に使わない。

「どうしてこの子は人を叩くんだろう。本当は寂しいんちゃうかとか原因を考えても問題解決にはなりません。それより暴力に対しては即隔離というルールを決めて機械的に実行するほうが有効です。叩いたら本人が1人で過ごすということをセットにする。そうして3歳か4歳の間に手を打てば、どんなに激しい暴力でも容易に直せますよ」

 暴力を放置したまま小学校中学年くらいを過ぎると、簡単には直せず精神病院への入院が必要になる場合もある。だが、親も専門機関も子どもが何か事件を起こすまで何の手も打たないことが多いと奥田さんは嘆く。