念願の歌手としてオリジナル曲が完成

 そして、10月に行われた単独ライブ『ハリウリサイタル』にて、自身初のオリジナルソング『ヴィルマ』を発表。作詞作曲は『佐賀県』でおなじみのお笑い芸人・はなわ(46)が務めた。

「もともと歌手になるのが夢で、ボイストレーニングにも通っていましたが、ボイトレの先生から『あなたの容姿では歌手の道は難しい』と諭されたんです。それでも諦めきれず、得意だった歌まねでこの道に入りました。当然、ものまねも厳しい芸の道ですが、いつか自分の歌を歌いたいという思いを同じ事務所の大先輩・ホリさん(45)に相談していたんです。すると『おまえはほかの人とは違う人生を歩んでいる。そのストーリーを歌にしなよ』と言われ、はなわさんを紹介していただきました

 ハリウさんは、日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。そんな彼女のルーツと決意、そして、太陽のように明るく、愛情深い母・ヴィルマさんへの思いを歌うことになったという。

現在のハリウさんとヴィルマさん
現在のハリウさんとヴィルマさん
【写真】幼少期、学生時代のハリウリサさん

まず、私自身のエピソードを文章にしてはなわさんに渡し、曲と歌詞を作っていただきました。完成した歌詞には、貧しくても音楽と笑顔が絶えなかった幼少期の思い出や、心配性な母に反発して家を出た日のことも綴られていたんです。すべての情景が鮮明に蘇り、初めて読んだときは思わず泣いてしまいました。それくらい、私の心情を深く捉えた歌詞だったんです。曲のタイトルも母の名前『ヴィルマ』に決まりました

「リサは誰にも迷惑をかけていない」

 ハリウさんはこの曲の中で、自身が“性的マイノリティ”であることもカミングアウトしている。

私もまだ明確に認識できていないのですが、自分が女性なのか男性なのかを限定せず、性にとらわれない“Xジェンダー”が、私のセクシュアリティに最も近い印象です。恋愛対象は子どものころから女性だったので、友達に好きな人を訊かれたら女子の名前を答えていました。でも、学年が上がると『女の子が好きなの?』と周りが不思議に思っているのを見て、自分はほかの人と違うのかも……と考えるようになりました」

 それからは、男性が好きなフリをして、女性らしい服を着るなど“女の子”になる努力をした、とハリウさんは振り返る。

「この仕事を始めてから、自分のセクシュアリティについて事務所の先輩にも相談しました。隠すつもりはありませんでしたが、私のデビュー当時はまだ、女性のLGBTQは扱いにくいという理由で、大々的な公表は避けていたんです。でも最近になってLGBTQの話題がポジティブに扱われるようになり、ホリさんやはなわさんと相談して、曲にも入れる決心をしました。何より、母が私の性を受け入れてくれた事実は“母の曲”を歌ううえでとても重要な出来事なので、避けることはできなかったですね」

 彼女が語るように、『ヴィルマ』の歌詞には、ありのままの自分を受け止めてくれた母への感謝の言葉があふれている。