家族には受けさせたくない検査・手術【がんの遺伝子検査】

「検査をしてもただ不安が増すだけ」

遺伝子検査で異常がわかり、両乳房を切除したアンジェリーナ・ジョリー
遺伝子検査で異常がわかり、両乳房を切除したアンジェリーナ・ジョリー
【写真】遺伝子検査によって乳房切除をしたハリウッド女優

 うちの家系は胃がんが多いなどと聞くと、自分もなるのではと不安になり、がんのリスクがわかる遺伝子検査を受けたくなる人もいるかもしれない。しかし、遺伝子検査はあまり意味がないと、秋津壽男先生は話す。

「遺伝性のがんにかかるリスクが遺伝子検査で正確にわかるかというと、そうではありません。現時点ではデータ数が少なく、確率の予測精度が低すぎるのです。

『膵臓がんになる確率は40%』という検査結果が出ても、数値の裏付けが弱く、不安を募らせるだけです」

 ちなみに、がんの種類によって検査の精度に違いはあるのだろうか。

「乳がんの発症に関わるBRCA1とBRCA2という遺伝子の変異を調べる検査は、精度の高い大切な検査でおすすめできます。

 しかしこれも、ネットでできる通販型の簡易検査となるとおすすめできません。あと5年待って、サンプル数が増えて精度が上がれば、また違ってくるかもしれませんが」(秋津先生)

家族には受けさせたくない検査・手術【血管年齢検査】

「検査の精度が低く当てにならない」

 血液サラサラ、血管年齢が低いといったフレーズは、芸能人の健康チェック番組でもおなじみだ。そんな番組を見ていると、自分の血管や血流の状態がつい気になってくるが、血管や血流の状態を手軽にチェックできる毛細血管検査は当てにならないと秋津先生は言う。

「この検査の結果がたとえよくても、血管美人とはいえませんね」

 検査では、極めて明るい光を指などに押し当てることで、皮膚の内側の毛細血管の様子を観察する。採血不要なのが人気のポイントだが、デメリットがある。

「検査機器の押し付け具合で、結果が変わってしまうことがあります。まだまだ精度の低い検査です」(秋津先生)

家族には受けさせたくない検査・手術【美容外科手術】

「20代の美容外科医には要注意」

 近年、美容整形に関するCMやニュースなどを見る機会が増えてきている。

「昨今、在宅勤務だったり、マスクで施術部分が隠せたりするため、美容整形手術を受けやすくなったと感じる人もいるようですが、手術は慎重に検討したほうがいいでしょう」と語るのは、谷口先生だ。

 整形を公にする芸能人が増えたり、目元のプチ整形などお手軽な手術が生まれたりと、整形自体のハードルは下がりつつある。ただ、手術してもらう医師はしっかり選んだほうが身のためだという。

「実は、形成外科専門医の資格を持っていない美容外科医もいます。専門医資格がなくても手術すること自体は問題ありませんが、腕がちょっと心配です。というのも、若い医師に整形手術されて失敗した、といった話は珍しくないのです。

 形成外科専門医資格の取得は、最速でも30歳。なので、少なくとも20代の美容外科医には関わらないほうがいいと個人的には思います」(谷口先生)

お話を聞いたのは……
谷口 恭先生●太融寺町谷口医院院長。文系大学卒業後、社会人を経て医学部入学。どんな人のどんな症状も診察する総合診療にこだわりながら、ウェブなどで多数情報を発信している。

寺田武史先生●アクアメディカルクリニック院長。精力的に情報を発信し、新著『なぜ、人は病気になるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)は、Amazonでベストセラーに。

秋津壽男先生●秋津医院院長。テレビ東京系『主治医が見つかる診療所』では、「何でも解決スーパー町医者」として初回からレギュラー出演。出版物や講演、テレビ出演など多数。

(取材・文/高宮宏之)