「人生おもしろおかしく生きたらええやん」

「私と同世代の男性は、いい意味でカッコつけたい人が大半かと。でも、私はカッコつけず、つらいと言います。カッコつけたところで今風のイケメンでもないし(笑)。

 それにしんどい、場合によっては弱いというのを自分の中にとどめすぎると、苦しゅうなってくる。いい患者になんて、ならなくていいんです。どんどん弱音を吐いて医療スタッフにも相談して」

 ひとりで悩むより、誰かに聞いてもらうことで「変えられないこと」や「諦めなくていいこと」を見極められ、楽になると話す。

「体重は今、73kg。下血から4年半たったので、ほかのがんが出る可能性もありますが、このまま二千日、三千日と人生の足し算を続けていければうれしいですね。私の場合は妻や息子がいたから今まで生きられた。2人の存在が自分を生かしている」

 とはいえ、自分は決して前向きなわけではないという。

「昔のようには食べられませんし、がん患者になって楽しくないこともいっぱいある。それでも、『人生、おもしろおかしく生きたらええやん』が私の信条なんです」

 還暦を迎える今年の目標は、近年呼ばれることが増えた講演会で、地元・愛知県以外の都道府県をできる限り回ることと、YouTubeを勉強して現状のことをもっと多くの人に発信することだ。

「講演には専属秘書の妻が同行するでしょうね(笑)。これまであんまりふたりで旅行に行けていなかったので、せっせと妻孝行したいと思います。そんな時間を得られたのも悪くないなと」

大橋洋平先生●59歳の緩和ケア医。JA愛知厚生連 海南病院・緩和ケア病棟にて非常勤医師を務める。現在は緩和ケア病棟に入る前の患者さんへの外来面談を担当している。近著に『緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡』(双葉社)。妻と、現在は社会人になった息子との3人家族。