筋肉量が減るとがん治療に悪影響

 がん患者になってしまってからも筋トレが必要な理由の第一に、筋肉量が著しく減少することが挙げられる。

がんになると筋肉量が減少する理由は主に3つ。(1)入院などによる運動不足。(2)抗がん剤治療による食欲低下などの影響で、タンパク質の摂取が不足すること。(3)がんに伴う炎症・代謝の異常です。

 炎症反応が慢性化することで、タンパク質の合成が阻害されたり、筋肉中のアミノ酸の分解が促進され、結果的に筋肉量が減ってしまうのです」

 健康な人でも、筋肉は加齢により少しずつ自然に減少。下肢の筋肉量は、20歳のときと比べると80歳では30%も減少するとされている。

 そこに運動不足や栄養障害などの要因が加わると、筋肉量がより早く、より多く減少。その結果陥るのが、「サルコペニア」という、筋肉がやせた状態だ。

「サルコペニアは、以前は老化現象の一部と考えられていました。しかし、病気が原因となることもあり、年齢に関係なく、がんを患ったことでサルコペニアに陥る方が多いことがわかってきました」

 厄介なことに、サルコペニアに陥ったがん患者は、手術、抗がん剤、放射線などの治療を受けても、いい結果が得にくいことが、多くの研究で判明している。

「サルコペニアががん治療に与える悪影響として、まず手術後の合併症リスクが高まること。また、抗がん剤治療でも、副作用に苦しむ頻度が高まり、治療が続けられなかったり、効果が低くなるリスクが高まります。サルコペニアはがん患者の大敵なのです」

 予防の意味でも、がん回復力を高める意味でも大切な筋肉量。現状で、サルコペニアに陥っていないか、チェックリストで確認してみよう。

がんの大敵!サルコペニア度チェック
□握力が男性で28kg未満、女性で18kg未満
□イスに座った状態から立ち上がる動作を5回繰り返したとき、12秒以上かかった
□両手の親指と人さし指で輪を作り、利き足ではないほうのふくらはぎのいちばん太い部分を囲んだときに、すき間ができる
□ペットボトルのふたが開けにくい
□片足立ちのまま靴下をはけない
□横断歩道を青信号の間に渡りきれない