3人に1人は心の病に

 不登校の理由の多くは、体調不良、成績不振、先生や友達との関係など。原因は多岐にわたるものの、今の教育現場が“時代に即していない”ことが問題の根底にあるのではないかと、土橋さんは指摘する。

「世の中でこれだけリモートが進み、自宅でのスクーリングが可能になったにもかかわらず、教育現場の“学校に来て学ぶこと”のみを是とする風潮は変わっていません。いじめが起きた場合も、いまだに被害者と加害者を対面させ加害者に謝らせて終わりということが多い。子どもたちは、理不尽な制約が多い学校にストレスを感じ、距離を取ろうとしているのかなと思います」(土橋さん、以下同)

 不登校児の急増には、コロナ禍も少なからず影響していると分析する。休校期間で1日の生活リズムが狂い、学校生活に復帰できなかったというケースも。一方、対応する教員は、さまざまな課題に勤務時間を超えて取り組んでおり、疲労困憊している……。

学校に行けないわが子の悩みに寄り添いたいけれど、学校は旧態依然としていて柔軟な対応をしてくれない。板挟みとなる親の苦悩は深刻化していると感じます」

 土橋さんのもとに寄せられる相談は、多い日で1日約50件。悩みを抱える母親の約3人に1人は心の不調を抱え、心療内科などに通院をしていることも珍しくないという。

子どもと距離を置いて、心の余裕を持つこと

「子どものために……と精いっぱいやってきたけれど、結果につながらない、期待に応えてくれないから、“諦めました”“愛情がなくなりました”となるんだと思います」

 そうならないためには、子どもと適度な距離を取ることが重要。離職、休職の決断も早まってはいけない。

「子どもが不登校になると約2割の親が休職または退職を選択していますが、おすすめできません。一緒にいたからといって、解決策が見つかるわけではないですし、むしろ“私はあなたのために仕事を諦めたのに”と、子どもを責める要因になってしまいます」

 コロナ禍のリモート勤務で子どもの生活を管理できるようになったことがお互いにストレスとなり、逆に関係が悪化したという相談もある。ほぼ毎日、子どもと家で過ごす場合は、週に1回3時間でも、ひとりで散歩に出かけたり、カフェでゆっくりするなど、意識的に子どもと離れる時間を持つ。距離を置くことでお互いに心に余裕が生まれるのだ。

 また、子どもが1日中、動画やゲームざんまいで過ごすのを見てイライラするという声も多いが、その時は、いったん別の部屋に行くなどしてフラットな気持ちで接すること。

「子どもたちは、学校に行けない自分を責めて“どうせ自分なんて”と自己否定の気持ちに襲われている。そんなつらさから逃れるために熱中できるものを探した結果、それがゲームという場合もあります」