「カフェインを過剰に摂取し、中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります。長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています」

 欧米ではカフェインを多く含むエナジードリンクは既に問題視されており、イギリスでは、16歳未満のエナジードリンク購入は禁止されているのである。

 また、最近徳島県の高校でコオロギパウダーを使った給食が出されたことがきっかけで「コオロギ」食へのバッシングがネットを中心に起きた。これは「虫を食べるなんてーー」という生理的な嫌悪感が背景にあると思われるが、CBDについても「大麻由来のものだけに揚げ足は取りやすい。CBDの輸入製品の中には、気分がハイになるなど精神活性作用がある規制物質のTHCが含まれていることがわかったものもあります。どこかでバッシングが起きる可能性もある」(鈴木さん)という。

 しかし、どんなものにもメリットやデメリットがあり、生理的な嫌悪感やデメリットだけをクローズアップして排除するのは賢いとはいえない、特にCBD市場の盛り上がりは、欧米では新たな産業、経済効果の創出チャンスとしても捉えられているのだ。

2021年7月、CBD専門店『CBDNATION』の1日店長を務めるK-1ファイター武尊(たける)。CBD業界でも宣伝に有名人を起用するケースが増えてきた(同店プレスリリースより)

 鈴木さんはCBD、エナジードリンクにとどまらず嗜好品全般への付き合い方についてこう話す。

「CBDについて言えば、健康的に言うとそれほど大きなマイナスのあるものではないので許可されているはずなので、個人としては、周囲が許す限りは自由にやればいいのではないかと思っています。一方エナジードリンクはカフェインが多く含まれているから効くのだということは認識して取りすぎには注意した方がいいかもしれません」(鈴木さん)

 嗜好品は、際立って便利な点があれば、反面として悪い点があるのは当然のこと。一つ一つの商品のメリットやデメリット、またメリットをもたらす因果関係も考え、賢く付き合うことが求められているといえよう。

 嗜好品それぞれのメリットとデメリットを見極めるためには、製造側の正確なデータの提供はもちろんだが、国民の側にも常にデータを学ぶ姿勢が必要だろう。マスコミの側にも、称賛一色やデメリットの誇張一辺倒でない冷静な報道姿勢が求められる。このような要素が揃ってこそ成熟した嗜好品文化が形成されるのでは。

お話を聞いたのは……
鈴木貴博さん
経済評論家、百年コンサルティング代表
東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証グロース上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に『日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニング』(日経文庫)などがある。