2019年3月、28年間の現役生活からの引退を表明した元メジャーリーガー・イチロー選手。その記者会見が同年3月21日、シアトル・マリナーズとオークランド・アスレチックスの試合後に行なわれた。

 東京ドームでの開催だっただけに、テレビや新聞の野球担当記者に加えて、普段はスポーツ取材には縁がない情報番組やワイドショーのスタッフも集まったのだが、当時『ビビット』(TBS系)リポーターを務めていた上路氏も会見に参加。

「現役時代のイチローといえば記者泣かせで知られていて、番記者でも本音を聞き出すことは難しく、また理屈が通らない質問には逆質問をしたりと取材現場ではいつもピリッとした雰囲気に包まれていました。

 晩年こそメディア対応も柔軟になったイチローですが、上路さんの質問で顔を曇らせた時はヒヤヒヤしましたよ」(同・ディレクター)

 張り詰めたような空気と静寂に包まれた中で行なわれた会見で、自ら挙手して「引退を決めた時期」について質問する上路氏に、「時期とかではなく毎日クビになる思いでプレーしていた」との主旨を独特の言い回しで答えたイチロー

イチローを笑顔にさせた質問

 続けて「引退を意識した瞬間」を聞き出そうとする彼女に、「質問なんでしたっけ?」と聞き返すなどさらに静まり返る会場。それでも8回で退いた際に、ダグアウトで迎えていたチームメイト・菊池雄星投手が泣いていたことを質問ーー。

「号泣中の号泣でした!あいつ!びっくりしましたよ。それ見てこっちは笑けましたけどね」

 思い出し笑いをしながら茶目っ気たっぷりに振り返るイチロー。それまでの重苦しかった雰囲気を一変させる、さすがのリポーター技術を見せた上路氏。そして、

(菊池投手と)抱擁されていた時にどんな会話を交わされたのかを知りたいな〜、とあのシーンを見て思ったんですが」

 ここが勝負とばかりに、畳み掛けるように菊池投手とのエピソードを深掘りしようとしたのだが……、