ただ、芸能人にとって「ヒマ」なことは何よりつらい。自分の人気がもうないのでは、という不安をかき立てられるからだ。

 まして、彼女は自己肯定感の低いタイプ。かつては「ふだんの自分」を「生ゴミ」と呼び「仕事をしている自分」が何より「生きてる」と思えるとまで言っていた。岩手での仕事がなければ、気持ちが折れていたのではないか。

「感じ悪かった」と自己分析

 これは岩手の土地柄も大きいのだろう。源義経が落ちのびてきた際、かくまおうとした「判官びいき」の歴史もある。

 平泉では旬のイケメン芸能人が義経を演じるイベントも恒例で、'20年は伊藤健太郎に決まっていた。が、コロナ禍で中止になったうえ、伊藤が不祥事で謹慎する事態に。にもかかわらず、再開された'22年は伊藤が務めた。

2022年、のん主演映画『さかなのこ』(公式HPより)
2022年、のん主演映画『さかなのこ』(公式HPより)
【写真】のんが10年ぶりに「あまちゃん」に!

《まつりと一緒に再起してほしい。奥州藤原氏以来の心意気を示したかった》(河北新報)

 というのが、観光協会の説明だ。

 なお、前出のネットサイトで、のんは昔の自分について「感じ悪かった」として「(今は)丸くなった」と分析。これは「創作あーちすと」としての活動で「弱い部分」も出せるようになったかららしい。

 昨年は「不気味で、可愛いもの」をテーマにした個展も開いたが、創作あーちすとというネーミングを含め、彼女には不思議ちゃん的なところもある。

 そんなところがうまくハマったのが、昨年の映画『さかなのこ』だ。さかなクンの半生を描いた物語で、魚好きの男の子を好演。とはいえ、これも『あまちゃん』と同じ海つながりのキャスティングだったりする。

 10年前の一発のおかげで、彼女の芸能人生はなんとかなりそうだ。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。