近視の進行によって目の老化が早まる!

 近年、世界中で近視が急増している。コロナ禍を経てスマートフォンやタブレット、PCを長時間使用する機会も増えたのではないだろうか。

 文部科学省が行った2022年の学校保健統計調査では、年齢が上がるにつれ裸眼視力が低い子どもが増え、視力1.0未満の中学生は過去最多の60.28%だった。

 問題なのは、近視が失明につながる可能性もあること。

「割合は多くありませんが、遺伝的に近視から失明につながりやすい人がいます。また、近視が悪化し、眼球の前後方向の長さ(眼軸長・がんじくちょう)がさらに伸びた『強度近視』になったら要注意。合併症として目の病気になる確率も上がります」

スマホを見る時間が長くなればなるほど、目のピント調節をする水晶体が硬くなり、ピントが元に戻らなくなる※写真はイメージです
スマホを見る時間が長くなればなるほど、目のピント調節をする水晶体が硬くなり、ピントが元に戻らなくなる※写真はイメージです
【写真】糸井先生が安全性を確認する実験をした際に起きた“カラコン障害”

 眼球は本来、丸い形をしているが、近視になると、眼軸長が伸びて楕円(だえん)形に。強度近視になれば、さらに長くなる。失明につながるのは、眼球が大きくなって網膜が萎縮し、細胞が死んでしまうためだ。

「目には柔軟性のあるところがあって、近くを見続けていると眼球が伸びるんです。スマホやタブレットでも同じ作用が起きます」

 近視が強くなれば網膜の循環が悪くなるため、緑内障(りょくないしょう)や黄斑変性症(おうはんへんせいしょう)といった合併症のリスクが上がる。

「コンタクトを作りにきた若者から緑内障が見つかるケースは最近、少なくありません。10代で見つかることも」

 “目の生活習慣病”と呼ばれる緑内障は、本来は40歳以上の20人に1人がかかる病気だ。徐々に視野が欠けていき、進行すれば失明に至る。

 また、黄斑変性症は、ものがゆがんで見えたり、中心部が黒くなって見えなくなる症状で高齢者に多い。進行すれば失明してしまうことも。

「今はいい薬がありますし、治療法もあります。早期に治療を始めることが大切です」

 近視の予防には、長時間近くのものを見る習慣をやめること。ほかに、外で適度に紫外線を浴びると、近視の進行を抑制できるともいわれる。

「目のピント調節力は年とともに落ちます。それは水晶体が硬くなるため。しかし、若くても近くのものを長時間見ていると調節力が落ち、老眼と同じ症状が起こるのを最近では『スマホ老眼』と呼びますよね。

 眼精疲労の原因にもなるので、目の調整力が落ちたら、負担をかけない使い方を心がけていただきたいです」

 視力が落ちる原因は近視だけに限らない。まずはその原因を調べることが大事だ。

「健康診断の視力検査だけでは、詳しいことはわかりません。視力のいい高齢者はそうでない人と比べて認知機能が高いというデータもありますし、できれば40歳以降は1年に1回、眼科で検査をしてほしいですね。

 ただ、眼鏡をかけているなら半年、コンタクト使用者は3か月に1回を目安にしてください」

糸井素純先生●道玄坂糸井眼科医院院長。医学博士。日本コンタクトレンズ学会常任理事を兼任。専門はコンタクトレンズ、角膜疾患(円錐角膜、ドライアイなど)。
糸井素純先生●道玄坂糸井眼科医院院長。医学博士。日本コンタクトレンズ学会常任理事を兼任。専門はコンタクトレンズ、角膜疾患(円錐角膜、ドライアイなど)。
教えてくれたのは……糸井素純(もとずみ)先生●道玄坂糸井眼科医院院長。医学博士。日本コンタクトレンズ学会常任理事を兼任。専門はコンタクトレンズ、角膜疾患(円錐角膜、ドライアイなど)。

(取材・文/宇野美貴子)