ただ、彼女が「母ちゃん」キャラで復活しているように、清原もまた、息子のおかげで好感度を少し回復した。

 東京六大学の慶應大で野球をやっている長男も含め、息子たちがニュースになるたび、ファンはその父が昔「すごい野球選手」だったことを思い出す。いわば「クスリの清原」である前に「野球の清原」だったというイメージの上書きがちょっとずつ施されるのだ。

“聖地”を守りたいファン心理

神奈川慶應義塾の清原勝児(3年)選手(慶應義塾高等学校野球部HPより)
神奈川慶應義塾の清原勝児(3年)選手(慶應義塾高等学校野球部HPより)
【写真】清原次男も出場の“慶應チア”が可愛すぎる!

 そもそも、子どもが立派に成長したうえ、同じ道に進んで頑張っていたりすると、親の評価もなんとなく上がる。歌舞伎の世界などはこれが長年システム化されてきた。

 一方、石田純一・いしだ壱成のように父子で似たやらかしをしていると、負の相乗効果がもたらされてしまう。あるいは「KKコンビ」として並び称されてきた桑田真澄のように、次男(Matt)が別の道で目立っているケースでは、父子鷹的なイメージアップはそれほどでもないわけだ。

 そして、このささやかな復権には「夏の甲子園」が特殊な空間であることも大きい。娯楽が多様化した今なお全試合が地上波で中継されるという国民的イベントであり、その舞台は「聖地」とまで形容される。そこで彼は、

「甲子園は清原のためにあるのか」

 という名実況が飛び出すほど、カリスマ的な活躍をした。不祥事のことはいったん忘れて、かつての功績を称えることで「聖なる空間」を守りたいという心理がファン全体に働くのである。『きょうの料理』での「清原スルー」とは別のもっと深い意味があるともいえる。

 もちろん、逮捕された過去は消せないが、これもまた、彼が高校時代、聖地で頑張ったご褒美だろう。幸いなことに、世の中は夏に頑張る元気な男の子に優しいのだ。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。