自分がハッピーになれる服を着よう

デザイナー生活50周年を迎えた2012年の春夏コレクションにて
デザイナー生活50周年を迎えた2012年の春夏コレクションにて
【写真】1968年、順調にキャリアを積み上げる26歳の頃の鳥居さん

 ファッションで大切なのは、自分の好きなものを自由に着て楽しむこと。他人の視線を気にする必要はないし、流行りのものでなくてもいい。“ハッピーになれる、その人らしい服であればいい”と鳥居さんは考える。

「私は年齢で区切ってデザインを考えませんし、自分が着たい服ばかりを作っています。マダムでもミニスカートが好きなら、堂々と楽しんでください。祖母は歌舞伎を見に行くとき、他の人が着ていない洋服生地で作った着物や帯を身につけていました。ニューヨークで一緒に仕事をしたモデルさんは、着物を後ろ前に着て、それは楽しそうでした」

 “ユキさんの服にはドラマがある”と語る安藤和津さん。

「自分なりにそのドラマの役をいかに演じようかと思います。同じ服を他の人が着ていたとしても、着こなし方でまったく別の役を演じられるのですよね。それからフェミニンなラインが多いので、ユキさんの服を着るたびに、痩せなきゃ!と思っちゃいます(笑)」

 鳥居さんの毎日の服選びは、お客さまと会う予定がある日はジャケットを羽織るとか、社内で立ったり座ったりする作業が多い日は動きやすいパンツスタイルにするとか、仕事の予定に合わせて決めているそうだ。前の晩に、着たらワクワクするかどうかも確かめながら、3パターンほど用意しておく。

「でも朝起きたら、準備した服が今日の気分に合わないこともあります。出かける直前まで、何を着ようか決まらない日もあるけれど、ちゃんとこれでOKと納得して、自分を好きでいられる装いにします。服は毎日をハッピーに過ごすためのものですからね。おしゃれが面倒になると、日々の暮らしの中の好奇心もしぼんでいくような気がするの。危険信号だと思いますよ」

 トレードマークの眼鏡は服に合わせて選んでいる。まぶしいときにはサングラスに替えて。口元は何色かを混ぜた赤い口紅で、明るくきりっと描く。

「だいぶ前からグレーヘアですが、いつごろからかは忘れてしまいました。トップはふんわり、サイドはゆるくねじって結び、装いに合わせてシュシュや服の端切れで結わえて楽しんでいます」

 手元は、分刻みの仕事をこなすために大切な仕事道具の時計、ブレスレット、リング、ネイルの4つで装う。習慣になっているので、アクセサリーをつけるのをうっかり忘れると落ち着かない。

「服を決めたら、毎朝ジュエリーボックスからあれこれ考えずにさっと選び出します。ほとんど悩みません。ジュエリーは祖母や母から受け継いだものや、今風のジャンクなものを自由に組み合わせて私らしい雰囲気にしています」

できたての著書を手に微笑む鳥居さん
できたての著書を手に微笑む鳥居さん