澤井:電波少年といえば、アポなしロケで有名ですよね(笑)

松村アポなしどころか、当時は企画がめちゃくちゃだった。会議でありもしない企画ばかり出てきて盛り上がってるんですけど、正気じゃ実現できないネタばっかなんですよ。村山富市の長い眉毛を切ってあげようとか、ユン・ピョウ(香港のアクション俳優)は本当に強いのか戦ってみようとか、榊原郁恵さんの次男が生まれた時に母乳を飲ませてもらおうとか……(苦笑)

過酷過ぎた企画で「俺、死んだわ」

澤井:とんでもないですね(笑)。電波少年は、小山薫堂さん、海老克哉さん、鮫肌文殊さんなどなど、僕からしたら大先輩の作家さんがたくさんいらっしゃったイメージです。

松村:そうでしたね。作家さんはいいのですが、現場のディレクター同士は結構バチバチしてましたね。みんな「良い映像を撮ってやろう」と競っているし、左右のインカムで指示が違う時はしんどかったですね。片耳ずつから「お前はどっちのADにつくんだ!」「なんで俺の言うこと聞かねえんだバカ!」とか聞こえてきてね。

澤井:コントみたい……笑

松村だからADさんも辞めていく人が多かったですね。「ジュース買ってきます」と言ってそのまま失踪したり、「ちょっとアポ取ってきます」と言って帰ってこなかったり。辞めたディレクターを集めたら、オールスター感謝祭ができるくらい(苦笑)。

 ちなみにユン・ピョウに襲いかかった時は「その映像は番組で使えない」って、プロデューサーから指示が出てたんですよ。でもその後、演出(土屋敏男さん)が、勝手に映像を放送して……。電波のスタッフさんたちは、本当に野武士のような人でしたよ。

澤井:今の時代だったらありえない逸話じゃないですか!

松村:いやいや当時でもありえないですよ(笑)。それぐらい現場は、おもしろい映像を撮ろうと殺気立ってるんで、俺なんかもう怒鳴られてばっかでしたね。特にインターナショナル(海外版スペシャル)の時は、何回も死ぬかと思いましたよ。

澤井:ちなみにどんな窮地に……?

松村邦洋と対談する澤井直人(撮影:山田智絵)
松村邦洋と対談する澤井直人(撮影:山田智絵)
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松村過酷すぎて元の企画を覚えていないんですけど、砂漠で遭難した時は死ぬかと思いましたね。脱水症状で唇が真っ白のなか、飛行機やヘリコプターが僕の上空を通過したんですよ。後から振り返ってみれば、状況を確認するためだったらしいのですが、その時は置いてかれたと思って「俺、死んだわ」と……。

 最近だと、『VIVANT』で堺雅人さんが砂漠を歩いているシーンがあったんですけど、あんなもんじゃない(笑)。たまたま電波のディレクターと話す機会があったのですが、彼も「あの時は口が真っ白になって、身体のアチコチが砂まみれで、砂漠なんてスーツじゃ歩けねえしリアルじゃねえよな」って。「いやそこはドラマですから」って返しましたけど(笑)。

澤井当時と今を比較すると、番組の規模からコンプライアンスまで全然違いますよね。それこそ電波少年のように、今に比べて放送作家も多くいたし、作家と演者との付き合いも深かった気がします。僕が作家をやっているもので気になるのですが、作家さんに求めることはありますか?

松村:楽にさせてくれる作家さんは嬉しいですよね。タレントっていつも不安だし緊張しているから、いるだけでほっとするような空気感を出してくれるというかね。そんなの百も承知だと思うんですけどね。