シニア世代に多い食後の低血圧

 高齢者は、食後に動悸やめまいがする「食後低血圧」にもなりやすいので注意が必要。

食事をすると胃と腸で消化吸収されますが、そのために多くの血液が消化管に集められ、全身を巡る血液量や水分量は減ります。さらに腹部臓器からは血管を拡張させる物質が分泌され血管抵抗が低くなり、食後は血圧が下がる方向に働きます。

 通常ならそこで交感神経が働き、末しょう血管が収縮したり心臓のポンプ機能が強まったりして心拍数が上がり、血圧は保たれるんです。ところが自律神経がうまく働かない方や高齢者は食後低血圧になりやすく、まれに失神することもあります

 どのようなときに食後低血圧になりやすいのだろうか。

「食事量が多いとき、高カロリー・炭水化物・温かい食事をとったときは血圧が下がりやすい。食事量は控えめに、タンパク質や脂質を多めにとり、できれば冷えたものをゆっくり食べましょう。

 また食後の動悸や眠気に悩まされる方が、貧血治療をしたところ症状が治まったケースがありました。この方は鉄欠乏性貧血でした。鉄は造血作用以外にもエネルギーや脳の神経伝達物質の産生にも関わります。

 鉄不足により疲れやすく、寝つきが悪くもなりますし、食後の症状にも影響が考えられます。この方以外にも低血圧を防ぐには大前提として、睡眠・運動・食事・ストレス管理を日々意識するのが大切ですね

 運動はウォーキングや水泳、ヨガなど軽めのものでもよい。夏に向けて今から生活改善に取り組みたい。

布施淳先生●内科・循環器科専門医。1994年に東京慈恵会医科大学卒業後、国立病院機構東京医療センターをはじめ、一貫して急性期総合病院の循環器救急に従事。2010年からは8年にわたり東京医療保健大学大学院の講師を務め、医療従事者の育成にも携わる。2018年にウェルビーイングクリニック駒沢公園を開院し、院長に就任。
布施淳先生●内科・循環器科専門医。1994年に東京慈恵会医科大学卒業後、国立病院機構東京医療センターをはじめ、一貫して急性期総合病院の循環器救急に従事。2010年からは8年にわたり東京医療保健大学大学院の講師を務め、医療従事者の育成にも携わる。2018年にウェルビーイングクリニック駒沢公園を開院し、院長に就任。
【写真】低血圧の危険なリスク、原因から対策までひと目で分かる一覧表

話を伺ったのは……布施 淳先生●内科・循環器科専門医。1994年に東京慈恵会医科大学卒業後、国立病院機構東京医療センターをはじめ、一貫して急性期総合病院の循環器救急に従事。2010年からは8年にわたり東京医療保健大学大学院の講師を務め、医療従事者の育成にも携わる。2018年にウェルビーイングクリニック駒沢公園を開院し、院長に就任。


取材・文/植田沙羅